市場からは、FRBが中立金利の水準まで迅速に政策金利を引き上げたあとは、利上げを一旦停止し、年末に向けて再評価するのではとの見方も出ている。6月と7月の2回の大幅利上げを実施したとしても、9月は通常の0.25%ポイントの利上げを実施して一旦停止との見方や、7月から通常の利上げに戻すのではとの指摘も出ている。いずれにしろ、市場は議事録を受けて、これまでの利上げ期待を一歩後退させている印象だ。
ドル円も127円台を回復。前日はNY時間に見切り売りが強まり、126円台半ばまで下落していた。127円ちょうどの水準が強い下値抵抗となっていたが、その水準をブレイクしたことでストップを巻き込んだ模様。早期に127円台を回復できるか注目されたが、きょうの動きを見た限りではなお上値期待を残しているようだ。
ユーロドルは戻り売りに押されており、1.06ドル台に再び下落。一時1.06ドル台半ばまで下落していたものの、FOMC議事録を受けて1.06ドル台後半まで戻している。
ユーロドルは5月中旬以降、リバウンド相場の兆候が見られているが、市場からは、ECBが利上げ方針を撤回するためのハードルは非常に高いとの見方が出ている。今週はラガルドECB総裁がブログで「第3四半期末までにマイナス金利を脱する」と述べ、7月と9月に利上げを実施する可能性を示唆し、市場を驚かせた。利上げのスピードについてはECB理事内でも意見が分かれているようだが、たとえ経済指標が悪化しても、ECBが利上げ方針を撤回するためのハードルは非常に高いと指摘している。
利上げ方針を撤回するには経済指標の悪化が必要だが、その可能性は低く、経済指標は軟化する可能性はあるものの、インフレに重点を置き始めたECBを阻止するほどの弱くはならないという。また、ECBが2023年末までに計1.75%ポイントの利上げを行うとの見方を維持するとも付け加えた。
ポンドドルはロンドン時間に一時1.24ドル台に下落していたが、NY時間にかけて買い戻しが膨み、1.25ドル台後半まで戻している。
前日は弱い4月の英PMIを受けて英景気の先行き不安感からポンドは売りが強まっていたが、第2四半期の英GPDはマイナス成長との見方も出る中で、市場は英中銀の追加利上げへの期待をなお温存させてはいるものの、あと0.25%ポイントの利上げを1回だけ実施して、ひとまず利上げを停止するのではとの見方も出ている。追加利上げは6月よりも8月の可能性が高いという。この日は英中銀のチーフエコノミストのピル委員の発言が伝わっていたが、英中銀は高インフレと戦うために追加の引き締めを実施する必要があるが、あまりにも早く行動して英国を景気後退に追い込む危険性もあると警戒していた。
この日は感染防止のため規制されていたパーティーが英首相官邸で繰り返されていた問題で、内部調査の報告書全文が公表された。ジョンソン首相は再度謝罪したうえで、辞任の可能性は排除している。政権内部からも退陣論が再燃しそうな気配もあるが、この件についての市場の関心は薄く、ポンドへの影響も限定的となっている。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美