先週後半からドル円の上昇に勢いが増している。しばらく115円台を中心とした見慣れた水準での取引が続いていたが、連日116円、117円、118円と大台を塗り替えてきている。足元では118円台前半で足固めをしている状況で、118円台後半をうかがう動きとなっている。
きょうあすと開催される米FOMC会合での利上げ開始が市場のコンセンサスとなっている。ウクライナ危機以前にはインフレ動向を鑑みながら一気に0.5%利上げ観測もみられていたが、さすがに有事発生とあって経済制裁による景気先行きへの不透明感から今回は0.25%利上げに市場の見方が落ち着いた。ただ、次回以降はインフレ動向次第では再び0.50%利上げの必要性も出てきそうだ。市場に毎回0.25%ずつ利上する見方が定着してしまうと、市場は常に先回りしてしまう。利上げの効果が薄れることに留意したい。
目先は、あすのFOMC発表後のドル円上昇の持続性が注目される。通常であれば、イベント終了として利益確定やポジション調整が入りやすいタイミングだ。しかし、足元のクロス円動向とみると有事リスクがある割には円安傾向が根強い。ユーロ円は130円の大台を試す動きとなっている。円安の面からのドル円相場下支えの面もありそうだ。
円安といえば、リスク選好が頭に浮かぶ。たしかに、ウクライナ情勢が好転することを期待して、先回りした円売り圧力とみる向きもあるようだ。一方で、悪い円安の面はどうか。エネルギー価格高騰に加えて、食糧品価格も上昇しており、インフレ圧力は長期化かつ深刻化しそうだ。日本の貿易収支は赤字体質に変化しており、最近は経常収支が赤字となる場面もでてきている。実需の円買いが円売りに負ける局面もありそうだ。
話の時間軸が錯そうしたが、短期では3月米FOMCでの利上げ開始と次回の大幅利上げ期待、ウクライナ情勢の好転期待、そしてより長期的には日本経済の体質変化といった材料が円安材料として注目されよう。ドル円の目先のメドとしては、2017年1月高値118.60レベル、2016年12月高値118.66レベルなど。その後は、120円ちょうどの心理的水準、2016年2月高値121.49レベルがポイントに。
この後の海外市場で発表される経済指標は、英ILO雇用統計(11-1月)英失業率(2月)、ドイツZEW景況感指数(3月)、ユーロ圏鉱工業生産指数(1月)、カナダ住宅着工件数(2月)、米ニューヨーク連銀製造業景気指数(3月)、米生産者物価指数(2月)、カナダ製造業売上高(1月)、対米証券投資(1月)など。米生産者物価指数は前年比+10.0%と予想されており、インフレが一段と進行する見込み。
ラガルドECB総裁のWELT経済サミット講演が予定されるほかは、目立った金融当局者の講演予定などはない。ウクライナとロシアとの停戦協議が本日も続行すると報じられており、関連報道に市場が反応する場面がありそうだ。
minkabu PRESS編集部 松木秀明