2020年に新型コロナによるパンデミック対応で、政策金利であるフェデラル・ファンド(FF)金利誘導目標を実質ゼロ金利となる0.00-0.25%とした米FRB。今年3月に利上げを開始し、5月の0.50%利上げを経て、6月以降4会合連続で0.75%利上げを実施しています。
年4回公表されるFOMCメンバーによる経済見通し(SEP)において、最新9月時点での見通しとして年内後1.25%の利上げ見通しが示され、12月の0.5%利上げが示唆されました。その後、米消費者物価指数(CPI)の高い伸びなどもあって、0.75%利上げが強まる場面が見られましたが、先月発表された10月の米CPIの伸びが予想に届かなかったこともあり、0.5%利上げが本命視されています。前回11月のFOMCでの声明でも、金融政策が経済活動とインフレ率に及ぼす影響の遅れを考慮する文言が加わっており、利上げ幅縮小に向けた姿勢が見られました。
11月30日に行われたパウエル議長の講演でも、利上げペースを緩める時期が「早ければ12月の会合」で来る可能性があると、今回のFOMCでの0.5%利上げが強く示唆されています。
しかし、短期金利先物市場動向からみた利上げ確率を示すCME FedWatchを見ると、78%が0.5%利上げを見込む一方、22%と決して無視できない割合で0.75%利上げ見通しが残っています。
それだけ、今の物価高や今後のインフレ期待の高さに対する警戒感があるようです。見通しが分かれている分、0.5%、0.75%どちらになった場合でも、相場への影響がありそうです。特に少数派である0.75%となった場合は、かなりのドル買いとなる可能性があります。
金利発表以外に今回注目されているのが、SEPの中で示される年末時点での各メンバーの政策金利見通し水準をドットで示したドットプロットです。前回9月時点では2022年末が4.375%、23年末時点が4.625%、24年末時点が3.875%、25年末時点が2.875%となっていました。12月の0.5%利上げと、2023年1月のFOMCでの0.25%利上げで利上げの打ち止めとなり、最終的な利上げの到達点であるターミナルレートが4.50-4.75%、2023年に利下げがスタートという見通しです。
上述の議長講演の中で、利上げの到達点について9月に考えられていたよりもいくらか高くなる必要がありそうという発言があることから、今回はドットプロットの上方修正があると見られます。今回が0.50%利上げとなった場合に4.75-5.00%(ドットプロットの表記では4.875%)に留まるのか、5%を超えてくるのかが注目ポイント。利上げに積極的なタカ派の代表格であるセントルイス連銀のブラード総裁が先月17日の講演の中で「最低でも」5.00-5.25%への利上げが必要と発言し、5%超への期待が強まりましたが、同総裁は先月30日の講演では、少なくとも4.9%(4.75-5.00%の中央値4.875%の意味と見られる)まで引き上げる必要がありそうだとしています。
金利先物市場動向の見通しでは3月FOMC時点で38%程度が5.00-5.25%以上を見込んでおり、5月のFOMC時点で4.75-5.00%と5.00-5.25%の見通しが拮抗する形となっています。ドットプロットで2023年末時点での5.00-5.25%見通しが大勢として示された場合、ターミナルレートの見通しが引き上げられ、ドル買い材料となりそうです。
パウエル議長の会見は11月30日講演から大きな変化がないと見られます。声明での金融政策の浸透の時間差を考慮した文言も継続すると見られます。
現状で大勢となっている見通しである0.5%利上げ、23年ドットプロットが5.00-5.25%へ上方修正となった場合が、相場への影響が最も限定的と見られます。何らかの形で多数の見通しからずれた場合は、そちらの方向への大きな動きが期待されます。
MINKABU PRESS 山岡和雅