今年3月のFOMCでの0.25%ポイント利上げから利上げサイクルに入った米FRB。
5月に約20年ぶりとなる0.5%ポイントの利上げ、6月、7月には2会合連続で0.75%ポイントを実施しています。0.75%ポイント利上げは1994年11月以来約27年ぶりとなります。
こうした4回の利上げを経て、現在の米国の政策金利(FF金利翌日物誘導目標)は2.25%-2.50%まで上昇してきました。ある程度のブレがあるとはいえ、現在の水準は今年前半時点で中立金利といわれていた水準まで到達しています。
これまでの積極的な利上げの跡ということもあり、今回のFOMCでの利上げについて、前回のFOMC直後は利上げ幅を少し縮めて0.50%ポイント利上げが大勢となっていました。しかし、8月に入って発表された7月の雇用統計の堅調さ、7月の消費者物価指数でのコア部分の力強さなどが支えとなり、3会合連続での0.75%ポイント利上げ期待が浮上。0.5%ポイントと0.75%ポイント利上げの見通しが拮抗した期間を経て、先月末のジャクソンホール会議でのパウエルFRB議長講演での積極姿勢を受けて、0.75%ポイント利上げ見通しが大勢となりました。
その後もFRB関係者からは0.75%利上げに前向きな発言が相次ぎました。利上げに慎重なハト派の代表格として知られるシカゴ連銀のエバンス総裁ですら、0.75%ポイント利上げの可能性は十分にあると発言するなど、FOMC内が相当タカ派に傾いているという印象を受ける状況に。また、9月に入ってISM製造業景気指数や雇用統計などの重要指標が軒並み堅調となったことも、市場の0.75%ポイント利上げ見通しを支える形となりました。
こうした動きがドル買いを支える展開が続いた後、13日に発表された8月の米消費者物価指数(CPI)の結果を受けて、大幅利上げ見通しがもう一段加速しています。8月に入ってのガソリン価格の下落がEIA(米エネルギー情報局)調査などによりわかっていたこともあり、米CPIの発表前市場予想は前年比+8.1%と、7月の8.5%からの鈍化が見込まれていました。結果は+8.3%と小幅な鈍化にとどまりました。エネルギーと食品を除いたコアの前年比+6.3%と7月の+5.9%、市場予想の+6.1%を超える伸びに。前月比では全体が市場予想の-0.1%と低下する見通しに対して+0.1%、コアは市場予想が+0.2%と7月の+0.3%から鈍化見込みとなっていましたが+0.6%の大幅な伸びにとなりました。全体的に相当強いという印象を与える結果です。
この結果を受けて市場では今回のFOMCでの1.00%ポイントの利上げ見通しが浮上してきています。短期金利先物市場動向からみた利上げ割合を示すCMEFedWatchを確認すると、米CPI発表直前では0.75%ポイント利上げが87%、0.5%ポイント利上げが13%という状況でした。米CPIを受けて0.5%ポイント利上げ見通しがなくなり、代わって1.00%ポイント利上げ見通しが浮上。一時は33%前後と、約1/3が1.00%ポイント利上げを織り込むという状況に。今月10日からFOMC前のブラックアウト期間(FOMCを前に当局者が金融政策についての発言が禁じられる期間)に入っており、FRB関係者発言が出てこないため、どこまでメンバー内のタカ派姿勢が強まっているのかはわかりませんが、市場の期待はかなり強まっているという印象です。
発表は日本時間で22日午前3時。午前3時半からパウエルFRB議長の会見が予定されています。
MINKABU PRESS 山岡和雅