米国は12日に発表された3月の消費者物価指数が前年比8.5%と、2月の7.9%から大きく上昇。市場予想の8.4%も超える伸びとなりました。雇用市場が堅調で1日に発表された3月の雇用統計での平均時給が前年比5.6%の伸びを示すなど、賃金水準も上がっているとはいえ、インフレ調整後の所得は低下傾向。個人消費を見ても、インフレ調整をかけた個人消費支出は低下しており、物価高の家計に及ぼす悪影響が懸念されているだけに、今後の大幅利上げが期待される状況となっています。
FRB関係者の発言も、こうした状況を受けて引き締めにかなり前向きになっています。今年のFOMC投票権を持つメンバーの中では、超ハト派といわれるブレイナード理事の次ぐらいにはハト派という印象のあるウィリアムズNY連銀総裁が、14日に5月のFOMCでの0.5%利上げについて、「妥当な選択肢」と大幅利上げを支持する発言を行うなど、米FRBの中も積極的な引き締めに向けた動きで固まっていると見られます。
金利先物市場動向からみた利上げ見通しを示すCMEFedWatchを確認すると、5月の0.5%利上げは90%以上織り込まれています。6月のFOMCでも0.5%以上の利上げを行うとの見通しも90%を超えています(ちなみに25%程度は0.75%の利上げを見込んでいます)。このように、市場が今注目しているのが5月以降のFOMCで、どこまで大幅利上げが続くのか。年内あと6回あるFOMCですべて0.5%の利上げを実施すると、年末には政策金利が3.25%-3.50%となります。
今年の投票権を持つ地区連銀総裁は偶然タカ派なメンバーがそろっていますが、その中でも特にタカ派として知られるセントルイス連銀のブラード総裁ですら、年末までに3.00-3.25%が望ましいとしているように、年内すべてのFOMCでの大幅利上げまではFRBも市場も今のところは見込んでいません。
先ほどのCMEFedWatchをみると年末時点で2.50-2.75%と2.75-3.00%の見通しが拮抗している状況。残り年6回すべてのFOMCでの利上げを織り込み、その中で3回もしくは4回大幅利上げに踏み切る回があるといった見通しという状況です。
こうした市場の積極的な引き締め期待が強まる中、FRB関係者の発言への注目度が高まっています。中でもパウエル議長の発言はかなりの注目を集めそうです。
一方ECBは引き締めの動きも、慎重姿勢を崩していません。注目された14日のECB理事会では、現行の資産購入プログラム(APP)の縮小方針を示し、終了については第3四半期に終了する可能性が強まったとしました。終了の可能性が強まったとの表現があるものの、時期的には前回のガイダンスを維持した形で、終了についての判断は6月のECB理事会で行うとしています。
利上げについては、主要金利の調整は資産買い入れプログラム終了後しばらくしてから実施としています。
ユーロ圏の3月の消費者物価指数が前年比7.5%と、2月の5.9%から大きく上昇。ユーロ圏最大の経済大国ドイツでも3月の消費者物価指数(EU基準)が前年比7.6%と2月の5.5%から一気に上昇するなど、ここに来てユーロ圏の物価上昇がかなりの激しさを見せる中、市場は利上げの前倒しに向けた動きを期待していました。それだけに、当初見込まれていた9月と12月に利上げを実施という見通しを補強するような声明に失望感が広がりました。
理事会後のラガルド総裁会見では、資産買い入れの終了について、第3四半期のいつの時点でも可能。利上げ開始のしばらくという期間について、明確な時間枠はなく、数週間もしくは数か月後になる可能性と発言しました。これにより理論上は7月の利上げも可能になります。
ただ、声明、会見を合わせてみた感想としては、米国などに比べて積極性が弱いという印象に。同席するパネル討論会の中で、パウエル議長が積極的な引き締め姿勢を示した時、ラガルド総裁がどのような発言を行うのかが注目されるところです。
パウエル議長とラガルド総裁の引き締めに向けた温度差が強調されると、ユーロ売りドル買いの動きが強まります。ラガルド総裁が積極的な引き締め姿勢を示し、温度差がそれほど感じられないようだと、ユーロの買い戻しもありそう。世界中の注目を集めるパネル討論会となりそうです。