2月に入って発表された米主要経済指標は3日発表の1月の雇用統計が驚きの好結果となったほか、14日の消費者物価指数(CPI)、15日の小売売上高、16日の生産者物価指数(PPI)が軒並みの強さを示しました。この結果を受けて1月末時点では市場の見通しの主流となっていた3月での利上げ打ち止め期待が大きく後退しほぼゼロに。それどころか、3月に0.5%利上げを見込む動きが3割弱まで上昇したほか、6月時点で5.25-5.50%まで金利が上がっているという見通しが7割に達するなど、利上げ期待が強まっています。
そうした中、主要指標で目立って弱かったのが1月のISM製造業景気指数です。12月の48.4から47.4に低下。市場予想の48.0も下回りました。内訳の中でも注目度の高い新規受注が12月の45.1から42.5に2.6ポイントの低下。生産が48.6から48.0に0.6ポイントの低下となりました。これらは2020年半ば以来の低水準です。昨年の製造業における大きな懸念材料であったサプライチェーン問題については正常化が進んでおり、受注残や入荷関連の数字が改善を見せていますが、それ以上に需要減の警戒や利上げの動きなどが受注や生産に影響した形です。雇用は0.2ポイント低下しましたが、好悪判断の境となる50超えを維持しました。
一方、強く出たのが1月のISM非製造業景気指数です。製造業景気指数が弱く出たことで、その2営業日後に出た非製造業にもやや警戒感が見られましたが、12月の49.2から、経済活動の拡大・縮小の境とされる50を超えて55.2まで6ポイントの大幅上昇。市場予想の50.5と比べてもかなりの改善となりました。伸びの幅としては2020年半ば以来となります。内訳を見ますと、製造業で落ち込みが目立った新規受注が、非製造業では45.2から60.4へ、15.2ポイントという驚きの上昇となりました。水準的には2022年初め以来です。製造業では弱かった生産に相当する項目である業況についても12月の53.5から60.4に6.9ポイントの大幅上昇で、新規受注と共に60超えとなりました。雇用も小幅上昇で50.0となっています。12月分と比べて低下したのは物価上昇の一服を受けた仕入価格だけという強さでした。仕入れ価格は0.3ポイント低下しましたが67.8と依然として高水準です。
景気変動により敏感な非製造業の数字が強かったこと、その他の米主要指標が強かったことなどを受けて、今回の改善を期待したいところです。ただ、市場予想は製造業が47.8と小幅な改善見込みも、50には届かず。非製造業は54.5と少し低下となっています。先行指標であるマークイット社によるPMI(購買担当者)製造業(速報値)が47.8と1月の46.9から改善も50に届いておらず、今回の見通しにつながっていると見られます。PMI非製造業(速報値)は50.5と1月の46.8から上昇していますが。こちらは1月のISM非製造業景気指数が強かったもののPMI非製造業が弱く出ていたこともあり、その分のギャップを埋めたという印象。前回があまりにも一気の改善となった分、少し落ち着くという見通しです。
予想前後であれば市場の反応は限定的と見込まれますが、製造業が予想上に改善している可能性が十分にありそうで、その場合はドル高が期待されます。
MINKABU PRESS 山岡和雅