前回の雇用者数変化の内訳を見てみると、目立っているのがレジャー&ホスピタリティ部門の17.9万人増。12月が18.6万人増、1月が16.7万人増となっており、順調に雇用が伸びて、全体を支えています。同部門はカジノ・劇場・リラクゼーションなどの部門と、宿泊、外食などの部門からなり、基本的に接客を伴う職種だけに、新型コロナの影響を最も強く受けた部門でした。こうした部門の雇用が順調に回復している状況が見て取れます。とくに単一部門としては最も雇用者数の多い外食部門は12.37万人増と大きな伸びを示しました。
そのほか目立っているのが、ヘルスケア&社会福祉部門の9.42万人増。医療職などもここに入りますが、それ以上に介護やデイケアなどの部門の伸びが目立っています。小売部門も3.69万人と堅調な伸びを示しました。これらの職種も対面での仕事がメインとなりますので、新型コロナの影響を強く受けた部門でした。
一方で弱さが目立ったのが自動車及び同部門の1.8万人減。半導体不足などのサプライチェーン問題が依然継続しており、生産が伸びていない状況が、雇用にも表れています。ただ、サプライチェーン問題では流通関連の人手不足も問題視されていましたが、運輸・倉庫部門の雇用が4.76万人増と好調な伸びを示しており、自動車部門を除くと状況の改善が期待される状況です。
先行指標として知られるテンポラリーヘルプサービスは3.55万人増と堅調で、こちらは今回2月の雇用統計に向けて期待ができる状況です。
こうした状況を受けて今回の雇用統計ですが、非農業部門雇用者数の市場予想は45万人増と、前回と比べると伸びが鈍化も、かなりの高水準が期待されています。失業率は3.7%と前回からさらに下回る予想です。
関連指標を見てみましょう。今回は1日の発表ということで、ISM製造業、同非製造業は雇用統計の後の発表になります。
ADP雇用者数は41.3万人増と、前回の47.5万人増から若干の伸び鈍化も、好調な数字が見込まれています。予想前後の数字が出てくると好材料ですが、同指標は1月分が速報の30.1万人減から50.9万人増に、81万人の大幅上方修正を行うなど、やや不安定な形となっており、影響がどこまであるか。
週間ベースの新規失業保険申請件数は、調査期間が雇用統計と被る3月6日から12日の週が21.5万件と、2月の6日から12日の24.9万件を下回っており、こちらは今回の好結果を期待させる状況になっています。
10日に発表された2月の米消費者物価指数が前年比7.9%と約40年ぶりの高い水準を記録。31日に発表される2月の米PCEデフレータは前年比6.4%、同コアデフレータが前年比5.5%と、ともにインフレターゲットの2%をはるかに超える物価上昇の見通しを示す中、米国では今後の大幅利上げに向けた期待が広がっています。堅調な雇用の拡大は大幅利上げのハードルを下げるものとなるだけに、事前予想通りもしくはそれ以上の強い数字が出てくると、さらなるドル買いの動きが期待されます。
MINKABU PRESS 山岡和雅