まずはECB理事会です。前回7月21日のECB理事会で、11年ぶりとなる利上げを実施したECB。利上げ幅は大方の0.25%ポイント予想にたいして、0.50%ポイントとなりました。これにより主要政策金利は0%から050%、中銀預金金利は-0.5%から0%になり、2014年6月から続いたマイナス金利が解消しています。
前回の会合、当初は0.25%の利上げがECBから示唆されており、市場でもコンセンサスとなっていました。7月に入って示された6月のユーロ圏消費者物価指数(CPI)が前年同月比+8.6%と、統計を開始した1997年以降で最も高い水準となったことで、直前になって0.50%の可能性が指摘されていましたが、市場の見通しとしては0.25%が大勢となっていました。
また、7月13日から14日にかけてユーロドルが約20年ぶりにパリティ(1ユーロ=1ドル)を割り込むなど、ユーロ安の動きが強まり、輸入物価の上昇による物価全体への悪影響への懸念が広がったことも、大幅利上げにつながったとみられます。
ECBは9月8日のECB理事会でも積極的な利上げ姿勢の維持が示されたこともあり、市場は0.50%ポイントの利上げ継続を期待していました。
しかし、ここにきて0.75%ポイント利上げの期待が急速に広がっています。ECB理事会の中でも利上げに積極的なタカ派として知られるオーストリア中銀のホルツマン総裁、オランド中銀のクノット総裁が相次いで0.75%ポイント利上げの可能性に言及しました。エストニア中銀のミュラー総裁などの同調者も出てくる中、8月31日に発表された8月のユーロ圏消費者物価指数概算値速報が前年比+9.1%と7月の8.9%、市場予想の9.0%を超える大きな伸びとなり、0.75%利上げ期待がさらに押し上げられました。同日ドイツ連銀のナーゲル総裁は力強い利上げが必要と発言しています。
比較的中立に近いフランス中銀のビルロワドガロー総裁は、決断力が必要だが、予測可能で秩序だった利上げが必要と、少し軟らかいトーンで発言していますが、インフレにたいして断固とした姿勢で臨むとしており、大幅利上げの可能性を否定していません。
市場でも0.75%ポイントの利上げを強く意識する展開となっています。米金融機関大手ゴールドマンサックスとバンクオブアメリカ(BofA)のエコノミストはともに従来の予想を上方修正し、0.75%ポイントの利上げ見通しを示しました。短期金利市場でも9月もしくは10月のいずれかで0.75%ポイントの利上げを行うとの見通しを織り込んでいる状況に。今回に関しては0.5%ポイント利上げの可能性も残っており見方が分かれていますが、0.75%利上げが実施される可能性が相当高そうです。
この場合、ユーロ買いの動きが期待されますが、問題は同日行われるパウエル議長の金融政策に関するディスカッション参加と、それを受けた9月の米FOMCでの大幅利上げ期待です。
MINKABU PRESS 山岡和雅