本日22時半に11月の米雇用統計が発表される。前回10月の雇用統計は、非農業部門雇用者数(NFP)が前月比+26.1万人と、市場予想の+20.5万人を超える強気結果となった。前月比の比較元である9月分が前月比+26.3万人から+31.5万人に上方修正された上で市場予想を超えたことで、力強さを見せている。半面、失業率は3.7%と9月分や市場予想の3.5%から悪化した。労働参加率が0.1%低下した上での失業率上昇(一般的に労働参加率が上昇すると失業率が悪化、低下すると改善しやすい)と、こちらはかなり厳しい結果だった。NFPは事業所調査ベース、失業率は家計調査ベースと元となるデータが異なり、家計調査ベースの就業者数は前月比-32.8万人と9月から減少している。市場はNFPの結果を見て、発表直後にドル買いとなったが、その後ドル売りに転じた。NFPと失業率を比べると、NFPの変化の方が相場に大きな影響を与えるケースが多い。しかし、現在は12月FOMCの利上げ幅が0.5%に縮小されるか、0.75%で維持されるかで、市場の見方が分かれている。FRBの経済見通しで雇用関連の数字として採用されている失業率の悪化の方が市場の反応を呼びやすかったとみられる。
今回の市場予想はNFPが前月比+20.2万人。失業率が10月と同じ3.7%。NFPの伸びとしてはパンデミックで雇用が減少した後の局面としては2020年12月以来となる2番目に弱い伸び。前回のNFPの内訳をみると、アフターコロナで雇用が大きく伸びていた時期に全体を支えた飲食業、小売業、運輸倉庫業などで雇用者数の増加がいずれも1万人以下と、小幅にとどまっている。雇用者の総数はすでにコロナ前水準を上回っていることもあり、アフターコロナという観点からの雇用増の影響は薄れていると考えられる。コロナ流行前に20万人は好結果の目途となっていただけに、それほど弱いものではない。失業率も前回0.2ポイント悪化したとはいえ、歴史的にみると相当な低水準である。
予想前後の数字が出てくると、雇用統計としてはそれほど弱いという印象にはなりにくい。ただ先行指標とされるADP雇用者数や昨日のISM製造業景気指数の弱さもあり、予想を下回る弱さとなる可能性も。その場合はドル売りがさらに強まるとみられる。
MINKABU PRESS 山岡和雅