本日21時半に4月の米雇用統計が発表されます。毎回相場を大きく動かす大きな材料となる米雇用統計。米FRBの2大命題である雇用の最大化と物価の安定の片側であり、金融政策動向に大きな影響を与えることが、注目度の一つです。ただ、こちらに関しては今週の米連邦公開市場委員会(FOMC)後のパウエル議長会見で、今後数回のFOMCでの0.5%利上げ方針が示されたことで、注目度が少し後退しています。とはいえ、金融引き締め姿勢を強化する米FRBの姿勢に対して、米経済が堅調さを維持できるのかどうかという点ではかなり重要な指標。米GDPの約7割を占める個人消費の動向に大きな影響を与える指標だけに、今回も注目しておきたいところです。
事前予想は非農業部門雇用者数(NFP)が前月比38万人増と前回の43.1万人増から若干鈍化見込み。ただ、水準的にはかなりの高水準です。失業率は前回からさらに低下して3.5%見込みとなっています。
失業率はパンデミック前の2020年2月につけた3.5%に届くという見通し。前回までで全体の就業者数もパンデミック前と比べて約160万人減とほぼ戻ってきています。コロナ禍で退職した高齢労働者層の就業への復帰はあまり期待できない中で、失業率がパンデミック前に追いつくという状況は、米雇用市場の力強さを感じさせます。NFPの伸びも、コロナ前の水準に雇用情勢が戻りつつあり、小売部門、金融、専門及びビジネスサービス部門などが、コロナ前の雇用者数を上回ってきている中では、かなりの高水準という印象です。
前回11.2万人増と全体の増加を支えたレジャー&ホスピタリティ部門、これはレストランやバーといった飲食部門、ホテルなどの宿泊部門、カジノ・劇場などのエンターテインメント部門からなる接客をメインとする部門ですが、こちらは今回も好結果が期待されており、市場予想前後の数字は十分にあり得そうです。
関連指標を確認しておきましょう。
2日に発表された米ISM製造業景気指数は予想に反して3月から鈍化しました。3月の57.1に対して、市場予想は57.6となっていましたが結果は55.4にとどまっています。構成項目の中でも重要視される新規受注と生産がともに2020年5月以来の低水準となっています。雇用も3月から鈍化して50.9と7カ月ぶりの低水準に。
4日に発表された同非製造業景気指数も3月の58.3から強くなるという市場予想58.5に反して57.1にとどまっています。製造業同様に新規受注の落ち込みが目立っていることに加え、雇用部門が49.5と前回の54.0から落ち込むだけでなく、好悪判断の境となる50.0をも割り込む弱さを示しています。
同じく4日に発表された米ADP雇用者数は、前月比24.7万人増と、3月の47.9万人(45.5万人から修正)、市場予想の38.3万人と比べてかなり弱い増加にとどまりました。
これらの指標を見る限りにはおいて、今回の雇用統計、予想以上に弱めの数字となる可能性も意識されます。実際市場予想の推移を見ると、先週末時点での40万人増前後からじりじりと下がっており、市場の警戒感を感じさせます。予想以上に弱い数字が出たときには要注意です。
なお、物価高の状況からいつも以上に平均時給の注目度も高まっています。市場予想は前月比が3月と同じ+0.4%、前年比は3月の+5.6%から若干鈍化しての+5.5%です。
賃金上昇が予想に反して強まると、米国の大幅利上げ期待を支えてドル買いにつながる可能性があります。
MINKABU PRESS 山岡和雅