前日と雰囲気に変化はなく、市場はリスク回避の雰囲気を強めている。前日の米消費者物価指数(CPI)はインフレがピークに達したとの確信には至らず、FRBの積極利上げへの期待を高める内容となった。市場では、FRBや他の中銀もインフレを引き下げようと躍起となる中で、ソフトランディングを達成できるのか懐疑的な見方が広がっている。市場はハードランディングのシナリオを織り込もうとしているとの指摘も出ていた。
中国経済の悪化とFRBの利上げによる米経済へのダメージから、逃避通貨としての円の価値が高まり、2カ月に及ぶ円安は一旦終わりそうだとの指摘も出ている。株安、米国債利回り低下の中で前日の為替市場は、リスク回避のドル高にもかかわらず、それ以上に円が買われ、ドル円は調整色を強めていた。ドル円は125円程度まで戻す可能性があるとの声も一部から出ている。
ユーロドルは下値を切り下げる展開。一時1.03ドル前半まで急落する場面が見られ、2017年1月に付けた1.0340ドル付近を一時下回った。
このところの下落で市場からは、パリティ(1.00ドル)の声が本格的に出始めている。米大手金融からは、ウクライナ危機の影響が欧州経済を圧迫する一方、米金利上昇がドルを押し上げ、ユーロドルは20年ぶりにパリティを試す可能性があるという。なお、向こう1年間のユーロドルの見通しを従来の1.08ドルから1.02ドルに下方修正している。
ウクライナ危機はユーロ圏経済にとって不釣り合いほどのショックであり、それがユーロに対する脅威であることを、市場はようやく受け入れ始めていると指摘。また、スタグフレーションのショックがユーロに及ぼす悪影響を打ち消すためにECBができることは結局のところ、ほとんどないのが実情だという。
ポンドドルは一時1.2165ドル付近まで下落。2020年5月以来の安値水準。きょうは第1四半期および3月の英GDPが発表され、予想を下回る内容となっていた。特に3月の月次GDPが前月比で予想外のマイナス成長となり、第1四半期末に英経済が失速したことが示されている。
今回の結果を受けて市場からは、第2四半期、第3四半期ともに成長鈍化が予想され、高インフレも加わって、英経済には景気後退のリスクが高まっているとの指摘が出ている。エネルギー料金の高騰を含む高インフレで実質賃金が低下しており、英消費者の信頼感は悪化している。加えて、サプライチェーンのボトルネック、労働力不足、金融・財政の引き締め、緊迫したEUとの貿易関係などが英経済にとっての課題となっており、年内に景気後退に陥る可能性は十分にあるという。
英GDP(速報値)(第1四半期)12日15:00
結果 0.8%
予想 1.0% 前回 1.3%(前期比)
結果 8.7%
予想 8.9% 前回 6.6%(前年比)
英GDP(速報値)(3月)12日15:00
結果 -0.1%
予想 0.0% 前回 0.0%(0.1%から修正)(前月比)
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美