きょうの日銀決定会合と黒田総裁の会見が改めて円安を誘発したようだ。日銀は大方の予想通りに現行の緩和政策を据え置いたほか、黒田総裁は会見で「粘り強く金融緩和を続ける」と述べた。一部からは、円安に対して日銀は何らかの行動を取るのではとの見方もあったが、その期待は外れた格好。
また、同時に公表された展望レポートでは、消費者物価指数(CPI)の見通しが、食品を除いたコア指数で、22年度が1.9%となっていた。23年度、24年度に至っては1.1%となっている。日銀は目標の2%に届かない見通しを示し、当面は引き締めに転じる意向はないことを暗示していた。明らかにFRBやECB、英中銀との格差を鮮明にしている。
ドル円は目先に何らかのテクニカル的な上値抵抗も観測されず、130円台を維持して4月相場を終えるかが注目となる。
なお、第1四半期の米GDP速報値が発表になっていたが、予想外のマイナス成長となった。今回のGDPは在庫投資や純輸出の減少が圧迫し、事前に減速が見込まれていたが、個人消費の伸びが予想外に小さかったことや政府支出の減少がマイナス成長に繋がった。しかし、一時的要因も多く、設備投資は堅調なことから、悲観的な雰囲気までは出ていない。
ユーロドルは下値模索が続き、大きな心理的節目である1.05ドルを一時割り込んだ。ユーロドルが完全に1.05ドルをブレイクするようであれば、レベルシフトが起こり、パリティ(1.00ドル)を視野に入れる危険性も出て来ている。
一部からは、ECBがユーロ下落を食い止めるためにレトリックを強化する可能性があるとの指摘も出ているようだ。貿易加重ベースの実効為替レートでのユーロ安は抑制されているものの、パリティに急速に近づけば、ユーロ安はインフレ押し上げ要因となる。それに対抗するため、ECBは口先介入をはじめとした、何らかの行動を取ってくる可能性があるという。
ポンドドルも下値模索が続き、心理的節目の1.25ドルを割り込んでいる。一時1.24ドル台前半まで下落し、2020年7月以来の安値水準を更新した。来週は英中銀金融政策委員会(MPC)が予定されている。これまで一部からは、0.50%の大幅利上げも有り得るとの見方も出ていたが、その見通しは一気に後退しており、0.25%の利上げに留めるというのがコンセンサスとなっているようだ。
直近3月の英消費者物価指数(CPI)は総合指数で前年比7.0%となっているが、4月以降は電力・ガス価格の急騰もあって、更に英CPIは伸びが拡大すると見られている。一部からは年内に10%との声も出ている状況。一方、英政府の財政支援もなくなり、英消費者には過去に例を見ない生活危機も叫ばれている状況。個人消費も減速が見込まれる中で、英成長への懸念が強まっており、英中銀は完全にジレンマの状況に陥っている。今回は成長とインフレを両立させるために、少なくとも大幅利上げはあり得ないという。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美