先週の米消費者物価指数(CPI)が予想以上に強い内容となったことで、市場はFRBの積極利上げへの期待感を再び強めている。今週はFOMCが開催されるが、一部からは0.75%ポイントの大幅利上げを織り込む動きも出ているようだ。しかし、CMEが算出しているFEDウォッチでは、今回は0.50%ポイントの利上げが有力と見ている。一方で、7月か9月に0.75%ポイントの利上げの可能性も高めている状況。短期金融市場では米利上げサイクルの終着点であるタ―ミナルレートが2023年中盤までに4%に達する可能性を織り込み始めている。従来は3.25-3.50%と見られていた。
また、米国債利回りが上昇する中、ロンドン時間に一時2-10年債の逆イールドが示現した。1-2年後にリセッション(景気後退)入りを示すシグナルとも言われており、市場の先行き警戒感が示されている。今回のFOMCは、FOMCメンバーの金利見通し(ドット・プロット)や経済見通しも公表され、2024年にどの様な見通しを示すかも注目される。
ユーロドルは売りが加速し、1.04ドル台前半に下げ幅を拡大。5月に付けた年初来安値1.0350ドル水準が目先の下値メドとして意識される。21日線から完全に下放れする展開を見せており、5月中旬からのリバウンド相場は一旦終了したようだ。
ユーロ債市場でイタリア国債の利回りが急上昇しており、10年債は2014年以来の4%を一時突破している。ドイツ国債との利回りスプレッドが拡大しているが、拡大が続いた場合、ユーロは更に圧迫される可能性があるという。ラガルド総裁は先週の理事会後の会見で、利回りスプレッドを7月以降に議論するとしていたが、不安定なリスク環境を考慮すると、これらのスプレッドは今後も拡大圧力に直面する可能性がある。
市場はECBに対しても積極引き締めへの期待を高めているが、スプレッド拡大が加速した場合、市場の期待ほどECBは積極的にはならない可能性も想定される。そのような中、ユーロドルは1.02ドルまでの下落の可能性も指摘されているようだ。
ポンドドルも売りが加速し、1.21ドル台前半まで下げ幅を拡大。5月の年初来安値を更新している。21日線から完全に下放れする展開を見せており、5月中旬からのリバウンド相場は一旦終了したようだ。市場はリセッション(景気後退)への警戒感を強めている。ポンドはG10通貨の中でも景気に敏感な通貨と位置づけられており、きょうは対ユーロ、円でも売りが強まっている格好。
一部からは、ジョンソン政権がEUと結んだ北アイルランド議定書を破棄した場合、ポンドは長期的な打撃を受ける可能性があるとの指摘が聞かれる。英政府はきょう、EUとの離脱合意の一部に優先する法案を公表。EUとの貿易戦争に発展するリスクをはらむほか、ジョンソン首相と与党・保守党内の反対派の対立が先鋭化する可能性もある。さらに、国際法違反の認定を受ければ、投資家心理はさらに悪化する可能性があるとも指摘。英国は大幅な経常赤字を抱えており、その分、政府の国際的評価は重要だという。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美