日銀の黒田総裁が英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)主催のイベントで報じられた事前インタビューで、「日銀は金融緩和によってパンデミックからの景気回復を支え続けなければならない。日本のインフレは主にエネルギー価格上昇によってもたらされている。日銀はインフレ目標を安定的に達成していないため、金融緩和はこれまでのところ半分しか成功していない」と、緩和を続ける意向を強調していた。
FRB,ECB、英中銀など各国がインフレ対応の利上げに動く中で、日本の足元のインフレは欧米と比較すれば、明らかに落ち着いており、日銀は唯一緩和姿勢を貫く姿勢を堅持している。各国中銀の金融政策格差に市場の焦点が集まる中で、過熱感は否めないものの、円売りは最も手掛けやすい戦略となっている模様。なお、クロス円も買いが膨らんでおり、ユーロ円は10日続伸し、一時144円台まで上昇。2015年1月以来の高値を更新。
ユーロドルは底堅い動きを続けており、1.07ドル台を再び回復。ロンドン時間に1.06ドル台に値を落としていたが、NY時間にかけて買い戻されている。本日の21日線は1.0630ドル付近に来ているが、その上の水準は堅持しており、5月中旬からのリバウンド相場の流れはなお続いているようだ。
ユーロにとっては明日のECB理事会が注目となる。今回のECB理事会での利上げは無いことが確実視されているものの、ECBは7月に向けて利上げが差し迫っていることを示すシグナルを出すと考えられている。ただ、7月利上げはほぼ既定路線で、市場の注目は利上げ幅に移っている。利上げ幅については、ECB理事の間でも見解が分かれており、ラガルド総裁は0.25%ポイントの漸進的なアプローチを主張しているのに対して。ドイツ連銀などタカ派な理事からは0.50%ポイントの大幅利上げが主張されている模様。ECBがインフレに主眼を置けば0.50%ポイント、ウクライナ情勢の影響も警戒される中で景気に主眼を置けば0.25%ポイントといったところだ。確率は半々といったところ。
また、市場は年内に計1.00%ポイントの利上げを実施し、中銀預金金利を0.50%まで引き上げると見込んでいる。一部からは市場の織り込みは行き過ぎとの見解も出ているが、その辺のヒントも何か示されるか注目される。
ポンドドルは戻り売りが優勢となり、1.25ドル台半ばに伸び悩んでいる。前日は1.26ドルちょうど付近まで買い戻されていたが、1.26ドル台は強い上値抵抗となっている模様。ただ、本日の21日線は1.2485ドル付近に来ているが、その上の水準は堅持しており、5月中旬からのリバウンド相場の流れはなお続いている。
月曜日に行われた与党保守党の信任投票でジョンソン首相は自身のリーダーシップに対する信任を僅差で乗り切った。ただ一部からは、6月23日に行われる2つの補欠選挙でポンドは更なる変動に直面するとの指摘が出ている。与党保守党がウェイクフィールド、ティバートン・アンド・ホニトンの両補欠選挙で敗北するリスクがあるとしている。
保守党はまだ下院でかなりの多数を占めており、政局自体に大きな混乱はないものと思われるが、投票の結果がもたらす圧力が、支持層へのアピールのための早期減税につながる可能性があると指摘。もし、減税が支持されれば、ポンドは最近の上昇を維持する可能性があるという。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美