ただ、この日発表された中国の4月の小売売上高と鉱工業生産が予想を下回る弱い内容となるなど、世界経済への不透明感が強まっている。中国の指標についてはロックダウンの影響が出た格好だが、FRBをはじめとした各国中銀の利上げの影響のほかに、中国経済はもう一つの懸念ともなっている。
市場はFRBの利上げについては、ある程度織り込んだ節もある。そのような中で今度は利上げによる景気への影響に市場は神経質になっているようだ。為替市場はリスク回避に対してドル買い・円買いの反応となっているが、その中でも円買いが優勢となっている模様。
市場からは、短期的にはドル円の戻り売りが魅力的との声も出ている。リスク資産の継続的な下落のほか、成長懸念から短期的に米国債利回りが低下する可能性もあり、ドル円を圧迫する可能性があるという。市場はドル円のロングを大幅に積み上げていると思われ、戻り売りも出易いとも指摘した。テクニカル的に126.95円の水準をブレイクすれば、125円台前半までの調整の可能性もあるという。
ユーロドルはロンドンフィキシングにかけて戻り売りが出て、1.03ドル台に再び値を落とす場面が見られた。ただ、きょうは下げが一服しており、1.04ドル台を回復している。
ビルドワドガロー仏中銀総裁が、「ECBの正常化について明確なコンセンサスが形成されつつあり、6月の理事会は決定的なものになるだろう」と語ったことを受け、ECBの利上げ期待からユーロの買い戻しを誘っていた。
先週は一時1.0350ドル付近まで下落し、2016年の安値を更新していた。しかし、市場からは、さすがに過熱感もありユーロドルのショートポジションを若干縮小させたとの声も出ている。確かに中期的には、ユーロは対ドルで劣勢な展開が予想される。しかし、短期的に行き過ぎているようにも思われ、ここに大きな歪みがあるとは思わないと述べている。
ただ、ユーロ圏の景気の先行きに対する不透明感は根強い。欧州委員会の最新の予測によると、ロシアからの天然ガス供給に深刻な障害が発生した場合、パンデミックからのユーロ圏の景気回復はほぼ停止し、物価はさらに急速に上昇する可能性があると指摘していた。
ポンドドルも買戻しが優勢となっており、1.23ドル台まで戻している。ただ、弱気な見方は根強い。先週の安値から100ポイント以上戻しているものの、最近の弱気トレンドから脱却したわけではないとの声が多い。北アイルランド議定書をめぐる緊張が再び脚光を浴びポンドを圧迫する中、リスク志向が引き続き悪化した場合、今週中に1.20ドルを割り込む可能性も指摘されている。
今週は英消費者物価指数(CPI)や英雇用統計など重要指標が目白押しの週で、特に英CPIは総合指数で9%超の上昇が見込まれている。ただ、英国では生活危機が警戒される中で、英中銀は利上げに慎重姿勢を滲ませている。
市場からは、英中銀は他の主要中銀と同様に、成長鈍化と高インフレのトレードオフに直面している。しかし、英中銀は成長見通しにウェイトを置きつつインフレを目標まで下げるために、供給サイドの要因に依存することを選んだとの指摘も出ていた。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美