きょうはFRBがインフレ指標として参照しているPCEデフレータが発表され、予想を上回る内容となっていた。FRBのタカ派姿勢継続が再確認され、ブレイナードFRB副議長も、「FRBは時期尚早の政策巻き戻しをしないよう努力している」と述べていた。市場では、FRBの積極利上げとリセッション(景気後退)への警戒感が引き続き高まっており、リスク回避のドル買いは根強い。
市場では単独介入であれば効果は限定的との声は多いが、一部からは、ドルの容赦ない上昇に歯止めをかけるためには協調介入が不可避との意見も示されている。ドル高抑制のための協調介入であれば1980年代以来。世界の政策当局による協調行動は、米国と一部の国が大反対しようとも、時間の問題だという。
ドル高の世界経済への影響に対する懸念は強まっている。ドルインデックスは今週、2005年以来の高値を付けた。一方、対ユーロでは02年以来、対円では98年以来の高値となり、対ポンドでは過去最高に上昇している。来月は7-9月期の米企業決算の発表があるが、恐らくドル高の業績への影響は報告が相次ぐことも予想される。
ユーロドルはNY時間に入って戻り売りが先行し、0.9735ドル付近まで値を落としたものの、日本時間0時のロンドンフィキシングにかけて買い戻しが膨らみ、0.98ドル台に戻している。本日は9月期末ということもあり、実需のユーロ買いが入ったようだ。
きょうは9月のユーロ圏消費者物価指数(HICP)の速報値が発表になっていた。総合指数は前年比で10.0%と2桁に乗せ、ユーロ発足以来の高水準に上昇している。労働市場が依然としてタイトで、インフレが徐々にユーロ圏経済に定着していることから、今回のデータはECBの10月理事会での0.75%ポイントの大幅利上げを正当化する内容との見方が強まっている。
一部からは、ユーロ圏のインフレが過去最高を記録したことは逆にピーク接近を示す可能性があるとの声も聞かれる。昨年のベース効果もあり、10月か11月にインフレはピークを迎える可能性があるとしている。しかし、それはECBにとってあまり安心できる材料ではなく、利上げは来年も続く可能性が高いという。一方で冬場にかけてのリセッション(景気後退)への警戒も同時に強まり、ユーロの支援材料にもならないという。
ユーロ圏消費者物価指数(HICP)(概算値速報)(9月)18:00
結果 10.0%
予想 9.7% 前回 9.1%(前年比)
結果 4.8%
予想 4.8% 前回 4.3%(コア・前年比)
結果 1.2%
予想 1.0% 前回 0.6%(前月比)
ポンドドルは大きく上下動しているが、一時1.12ドル台まで上昇し、先週の英経済対策発表からのポンド安は解消されている。トラス首相とクワーテング財務相が予算責任局の責任者と会談するというニュースもポンド買い戻しをサポートしていたようだ。しかし、トラス首相の方針に変化はないようだ。
市場からは、英中銀による英国債市場への介入もあって、不安定な動きはひとまず落ち着いているものの、トラス政権が方針を変えない限り、この問題は燻り続けるとの見方も多く聞かれる。世論調査ではトラス首相の辞任を求める声も高まっているようだ。ポンドが本格的に安定するには、英国が抱える多額の対外債務への対応の明確化が急務との声も出ている。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美