市場では米金利先高観がさらに強まっており、短期金融市場では年内にさらに2.00%の利上げを織り込む動きが見られている。ウクライナ危機が依然として混沌としている中、米大手金融などからよりタカ派な見通しが出ていたことも米利上げ期待を押し上げている模様。米国債利回りも上昇が続いており、ドル円の下値はしっかりとサポートされているようだ。
ユーロドルは戻り売りが優勢となり、再び1.09ドル台に下落。1.10ドル台には上昇するものの維持できずにいる。本日の21日線は1.1025ドル付近に来ているが、強い上値抵抗となっており、下げトレンドが続いている。市場ではFRBの利上げ期待が高まっているが、ECBの利上げ期待も根強く、ユーロドルは下値をサポートされている。しかし、上値は依然として重い印象。
ウクライナ危機の不透明感は欧州経済への打撃が最も大きい。欧州は他の地域以上に天然ガスへの依存度が高く、ガス価格の高騰は消費者の生活を直撃する。欧州の天然ガスは3月上旬に過去最高値に跳ね上がり、メガワット時(MWHr)330ユーロを超える場面があった。現在は落ち着いているが、それでも100ユーロを超える水準が続いている。
今後、ロシアのエネルギー供給が途絶え、ガス価格が冬までに再び200ユーロまで高騰すれば、その影響は甚大で、ユーロ圏のインフレ率は下半期に10%に近づくとの試算も出ている。景気後退には十分な数字。その場合、ECBも引き締めを簡単にはしづらくなり、ユーロにとっては圧迫要因となりそうだ。
ポンドドルはNY時間にかけて下げ渋る動きが見られ、一時1.32ドル台に上昇する場面も見られた。この日発表の2月の英小売売上高が予想外に弱い内容となったこともあり、ポンドドルは1.3160ドル近辺まで下落する場面が見られていた。2月はパンデミックによる行動制限をすべて解除した影響で、英消費者が小売店以外で消費する機会が増えたためと分析されている。今後については、過去半世紀で最大の実質収入減が個人消費を抑制することが予想されるている状況。
一部からは、ウクライナ危機に対するポンドの底堅さは驚きだとの声も聞かれる。地政学的緊張とボラティリティの上昇は、国境を越えた投資フローに依存する経常赤字国にとって好ましくない背景となる。その中でのポンドの回復力は驚くべきことだという。エネルギー価格上昇で英国のエネルギー関連株への需要が高まっており、投資資金が流入していることも、ポンドの下支えに一役買っている可能性もあるという。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美