きょうのNY為替市場でドル円は124円付近での振幅が続いた。市場がFRBの引き締めへの積極姿勢を消化しようとする中で、ドル円は底堅い値動きを続けている。前日のFOMC議事録では、0.50%の大幅利上げとバランスシートを月950億ドルずつ縮小させる計画を具体的に示唆してきた。次回5月FOMCから縮小を始めるとの見方も出ている。
市場からは、今回の議事録は市場の予想よりも迅速にバランスシートを縮小させるというコミットメントを示し、従来のコミュニケーションよりも高いレベルの緊急性を描写したとのコメントも聞かれた。
パウエルFRB議長は金融引き締め策を、投資家の予想以上に積極的に打ち出しているが、市場はそれに追いつこうと躍起になっているという。物価が高騰し、中央銀行がそのコントロールに苦慮するような状況はこの40年間はなかった。その当時でさえ、それまでの経済環境や中央銀行の立場はかなり異なっていたが、現在の市場には、正確な道筋を示すベンチマークがなく、市場は発見モードになっているという。
ユーロドルは一時1.09ドル台を回復していたものの、上値は依然として重く、1.08ドル台に再び値を落としている。3月7日の安値1.0805ドル付近を視野に入れた動きは続いている状況。
来週14日にECB理事会が予定されているが、ウクライナ危機による不確実性の中でも、ECBは既に発表している資産購入縮小の方針を継続するとの見方も出ている。また、成長鈍化とインフレ加速の中で、ハト派とタカ派の間に溝が広がる可能性も指摘。ハト派は経済見通しの悪化と高い不確実性に着目し、金融政策の正常化は極めて緩やかにすべきと主張する可能性がある一方、タカ派からは、年内に少なくとも2回の利上げを求める声が大きくなっている。その場合、緩やかな政策の正常化(資産購入終了と中銀預金金利のゼロへの回帰)だけが、両者の溝を埋めるという。
ポンドドルはロンドン時間に1.31ドル台まで買い戻されていたものの、NY時間にかけて戻り売りに押され、再び1.30ドル台に下落。本日の21日線は1.3120ドル付近に来ているが、その水準の下での値動きが続いており、下向きのトレンドを継続している。3月に付けた直近安値の1.30ドルちょうどの水準が目先の下値メドとして意識される。
英国の会計年度は日本と同様に4月からだが、この時期は季節的にポンドに買いが入り易く、今年度も例外ではないはずだとの指摘も出ている。上昇には1.2980/1.30水準を維持する必要があり、このレベル付近には買い需要があるという。ただ、FRBと英中銀の格差拡大から、ポンドドルの上値は重いとの見方も根強い。英中銀は高騰するインフレを抑制するために刺激策解除に努めているが、いまのところはその姿勢は控えめだという。英中銀は昨年12月以降、政策金利を3回引き上げ、パンデミック前の水準である0.75%まで引き上げた。フォワードガイダンスもさらなる利上げの可能性を示唆している。英中銀が5月に0.25%の追加利上げを実施し、政策金利が1.00%に達した場合、これまでの言動から、保有している英国債の売却も下期から始まる可能性がある。
しかし、英国では財政引き締めや高インフレで消費者の生活費が圧迫されており、第2四半期の英GDPはマイナス成長との見方も増えている。1.00%に到達した場合の英国債の売却の可能性は高いものの、確実ではないという。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美