市場ではFRBの積極利上げによる景気後退を不安視する声がある中で、中国でのロックダウンの広がりはサプライチェーン問題を悪化させ、景気後退への懸念に拍車をかけるとの指摘が聞かれる。警戒感が広がる中できょうの米株式市場は続落しており、米国債利回りも低下する中で、ドル円も戻り売りが強まっている格好。一時127.50円付近まで下落する場面が見られたが、目先は先週サポートされた127.45円付近が下値メドとして意識される。
今週は日銀の決定会合が予定され、市場からは日銀の円安是正を期待する声も出ている。しかし、黒田総裁は先週のニューヨークでの講演で、緩和姿勢が適切との認識を改めて強調しており、現行のイールドカーブコントロール(YCC)政策の維持が有力視されている。
ユーロドルは売りを強めており、1.07ドル台を一時割り込んだ。2020年3月以来の安値水準。きょうの市場はリスク回避の雰囲気を強めており、為替市場はドル買い・円買いの動きが優勢となっている。そのような中でユーロドルは下値模索を強めているようだ。先週末までは強いサポートとなっていた1.18ドルの水準での売買交錯となっていたが、きょうの動きで完全に下放れの印象が強い。テクニカル的には1.05ドルを目指しそうな気配が高まっている。
週末のフランス大統領選ではマクロン大統領が勝利した。対抗馬のルペン候補はユーロ懐疑派であったこともあり、市場には安心感が広がった模様。週明けのユーロ相場は買いの反応も見せたものの、市場はマクロン大統領の勝利をすでに十分織り込んでいたこともあり、一時的な反応に留まっている。
FRBは積極利上げへの姿勢を強める中で、ECBは利上げの可能性を示唆しつつも、慎重姿勢も崩していない。今後、景気後退のシナリオが強まるようであれば、FRBとECBの金融政策の格差は想定以上に拡大すると見られているようだ。欧州はウクライナ危機の影響も抱えており、世界的な景気後退であれば、米経済よりも欧州経済のほうが脆弱と見られている。
ポンドドルも売りが加速し、一時1.26ドル台まで下落する場面が見られた。2020年9月以来の安値水準。各国中銀の利上げ圧力が強まる中で、ここに来て中国でのロックダウン拡大に対する警戒感も加わり、市場では世界的な景気後退への懸念が再び強まっている。国債利回りのフラット化も再度強まっている状況。
市場からは、多くの先進国に景気後退観測が広がれば、英国は特に他国よりも大きなリスクを抱えているとの指摘も聞かれる。英国では財政刺激策の停止や高インフレによる消費者の生活危機が叫ばれる中で、景気後退を警戒する声が以前から多い。その雰囲気がさらに広がれば、今後数カ月でポンドドルは1.20ドル-1.25ドルのレンジに滑り込む可能性もあるという。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美