きょうの為替市場はドル買いが優勢となり、ドル円も128円台まで買い戻された。米株式市場は上げが一服しているものの、米国債利回りが上昇しており、それに月末要因も重なってドル円は買い戻しが膨らんでいるものと思われる。
ウォラーFRB理事が「必要な限り0.50%ポイントの利上げが好ましい」とのタカ派なコメントを出したことも、ドル円をサポートしているようだ。一部からは、FRBが9月に利上げを実施した後に一旦様子を見るとの観測も出ているが、ウォラー理事の発言はその期待を後退させた格好。
本日の21日線が128.70円付近に来ており、現在はその付近での推移となっている。調整が終了し、明日からの6月相場で再び130円台を目指す展開になるか注目される動きではある。月末の動きでもあり、信頼感まではまだないが、下値が支えられていることは確かなようだ。
ユーロドルは一時1.06ドル台後半まで下落する場面が見られたが、NY時間に入って買い戻されている。市場は7月のECB理事会での0.50%ポイントの大幅利上げへの期待を高めており、ユーロドルは底堅く推移。
ロンドン時間に5月のユーロ圏消費者物価指数(HICP)が発表になっていたが、総合指数は前年比8.1%まで上昇し予想も上回った。ECBの利上げ期待を正当化する内容だが、ECB内では0.25%ポイントずつの緩やかな利上げと大幅利上げとで意見が分かれている。積極引き締めによる景気後退も懸念されているようだ。
きょうはEU首脳がロシア産原油の一部禁輸で合意した。ロシアから海上経由でEU加盟国に輸送される原油および石油製品の購入を禁じる内容。パイプライン輸送の大部分はドイツとポーランド向けだが、両国はEUの決定いかんにかかわらずロシアから供給を受けない方針を示唆している。ドイツは、こうした方針を堅持する決意を書面で示したという。この方針を貫けば、海上経由の禁輸と合わせた効果として、年内にロシアからEUへの原油輸出の9割がカットされることになる。
市場からは、これらの措置はエネルギー価格を上昇させインフレを高めるとともに、リセッション(景気後退)懸念も強める、いわゆるスタグフレーションへの懸念を高める可能性があるとして、短期的にユーロにマイナスとの見方も出ている。
ユーロ圏消費者物価指数(HICP)(概算値速報)(5月)18:00
結果 8.1%
予想 7.8% 前回 7.5%(前年比)
結果 3.8%
予想 3.6% 前回 3.5%(コア・前年比)
結果 0.8%
予想 0.7% 前回 0.6%(前月比)
ポンドドルはNY時間に入って買い戻しが出ており、1.26ドル台に戻している。きょうはドルの買い戻しが優勢となる中、ポンドドルは一時1.2560ドル近辺まで下落する場面が見られた。
ポンドはいまのところリバウンド相場の流れを続けているが、市場からは弱気な見方も多い。弱い経済指標と英経済に対するセンチメント悪化により、今後数カ月でポンドドルは再び下値模索のリスクがあるという。来月以降、消費者が4月のエネルギー価格の引き上げにどのように適応しているかがより明確に示される。それに伴う急激な景気減速が最終的にポンドの重石となる可能性があるという。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美