本日の米株は買戻しも見られ、一部からは買いの好機との見方も出ていた。しかし、上値は依然として重い状況に変化はなく、ダウ平均は序盤の上げを失っている。市場からは、最近の急激な株安が緩やかに回復したとしても、それに伴うドル下落は僅かに留まるとの指摘が聞かれる。世界的なリスク環境の不安定さを考慮すると、ドルの押し目買いへの関心は依然として強く、当面ドル売りが持続することはないという。中央銀行の利上げで世界的に景気後退が懸念される中、ドル高になるのは自然のことだという。
明日は4月の米消費者物価指数(CPI)が発表され、市場には結果待ちの雰囲気も広がっている。インフレはピークに達した可能性も指摘されており、CPIの予想は総合指数で前年比8.1%と前回から伸び鈍化が見込まれている。ただ、インフレのピークが過ぎたことを示したとしても、インフレ基調が依然として強いことを示す可能性は高いとも指摘されている。サービス業がインフレの原動力になり、サービス価格上昇が、賃金の上昇スパイラルは存在しないというFRBの主張にますます疑問を投げかけ、さらなるタカ派的なリスクを生む可能性があるという。
リスク回避の雰囲気が根強い中、ユーロドルは戻り売りに押されており、1.05ドル台前半まで下落。ただ、1.05ドル台は堅持している状況。ここにきて7月利上げへの期待が急速に高まっており、ユーロは上値が重いながらも、下押しの動きまでは出ていない。きょうはナーゲル独連銀総裁の発言が伝わり、7月の利上げ開始を支持すると述べていた。
ただ、市場はECBの利上げ期待を先取りしており、過度な期待がユーロを圧迫との指摘も聞かれる。市場ではECBが7-9月期に2回の利上げを実施し、中銀預金金利を計0.50%引き上げ、ゼロにすると予想している。しかし、7-9月は1回に留まるという。一方、FRBは6月のFOMCで0.50%の利上げを行う可能性が高く、米金利の予想が下方修正されない限り、ユーロは引き続き下落圧力に直面するとしている。
ポンドは上値の重い展開が続いており、ポンドドルは一時1.23ドルを割り込む場面が見られた。英政府が北アイルランド議定書の一部を破棄する準備をしているとの報道が流れていた。議定書の主要部分を一方的に破棄し、英国と北アイルランド間の物品検査の必要性を無くす法案を準備しているという。その場合、英国は条約上の義務に違反することになる。この法案は検査を廃止するだけでなく、欧州司法裁判所の権限を取り上げ、北アイルランドの企業がEUの規制に従う必要性をすべて取り除くものだという。
アナリストからは、「英政府が北アイルランド議定書の一部を覆す法案を提出すれば、EUからの報復措置を誘発し、英国が事実上の貿易戦争の引き金を引いたと見なされる。そのためポンドにとってはマイナスになる」との指摘も出ている。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美