ただ、市場からは長期的なドル高への期待も台頭している。FRBがインフレ抑制への意識を傾ける中、利上げサイクルが終了しても金利は落ちにくいとの指摘や、米資産が欧州資産をアウトパフォームし続けており、米資産が相対的に魅力的であること。そして、地政学リスクへの不安が高まる中、逃避および準備通貨としてドルの地位は金本位制を廃止した1970年代よりも強固になっている点を挙げている。
一方、ドルは短期的には年末にかけて下落との見方も出ている。欧州の成長が上向いたり、米インフレが3%超に留まる場合は、ドルの魅力は一時的に後退する可能性があるという。
ユーロドルは1.05ドル台で堅調に推移。ここ数日、ECB理事から7月利上げへの言及が相次いでいる。そのため市場でもECBが7月に利上げを開始するとの見方を強めており、短期金融市場ではそれを織り込む動きが活発化している。
そのような中で市場からは、ECB理事が0.50%の大幅利上げの可能性に言及すれば、ユーロは買戻しが膨らむのではとの指摘も聞かれる。7月の理事会まではまだ時間的な余裕があることや、市場は7月利上げを既定路線と考え始めており、そのような言及への期待も台頭しているという。実際、ユーロは対ドルでは上値が重いものの、対ポンドでは買戻しが強まっている。いずれにしろ、6月のECB理事会は要注目となりそうだ。
ポンドドルはロンドン時間に一旦1.24ドル台まで買い戻されていたものの、一時1.23ドル台前半に再び下落している。ポンドドルは先週の英中銀金融政策委員会(MPC)を受けて売りが加速し、1.22ドル台まで下落していた。さすがに下げ過ぎ感も強まっており、ショートカバーの動きも出ているものの上値は依然として重い。過熱感を測るテクニカル指標であるRSIは27まで低下しており、下げ過ぎ感を示す30を下回っている。
今週12日木曜日に3月と1-3月期の英GDPが発表される。3月の月次GDPは前月比0.0%、1-3月期は前期比で1.0%と、10-12月期の1.3%から伸び鈍化が見込まれている。月次GDPについては、サービス業の回復が息切れしているほか、サプライチェーンのボトルネックが製造業に重くのしかかり、3月に景気回復が停滞したことを示す可能性が高い。一方、1-3月期については、オミクロン株に伴う行動規制解除が押し上げ効果となるものの、それに伴って逆に、医療部門の生産高の減少がそれを相殺すると見られている。
英国ではインフレ急騰に伴う家計の実質所得圧迫により生活費危機が叫ばれている。その中で第2四半期はマイナス成長との見方が多い。英中銀は先週のMPCで、利上げ姿勢こそ堅持していたものの、来年のマイナス成長の可能性を示すなど慎重姿勢も滲ませ始めていた。英インフレは年内に10%超まで上昇との見方がある一方で、景気後退への不安感が英中銀の動きにブレーキをかけているようだ。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美