きょうもロンドン市場で短時間に急速に1円以上急落する場面が見られていた。先週の米消費者物価指数(CPI)発表後にも似たような動きがあったが、直後に戻している。日銀の当座預金残高が減少しており、市場では財務省の覆面介入も取り沙汰されている。150円までの間に財務省は介入を実施するとの見方も多く見受けられるが、単独介入ではやはり勢いが限られることから、介入をしても下値ではファンド勢が待ち構えているとの指摘も出ている。
基本的には日銀がスタンスを変えるか、FRBがタカ派姿勢を後退させるまではこの状況が続くと見ている向きは多い。しかし、来年の世界的なリセッション(景気後退)入りが確実視されつつある中で、そろそろ今回のドル高・円安局面もクライマックスが接近しつつあるのではとの声も囁かれ始めている。
きょうの市場はリスク選好の雰囲気が続く中で、ユーロドルは0.98ドル台半ばを中心に方向感なのない上下動に終始している。上値には慎重な気配はあるものの、21日線の上での推移を続けており、本格的なリバウンド相場に入るか注目される。
トラス英政権の減税計画撤回で、市場では英中銀の利上げ期待も低下している。しかし、ECBの利上げに対する市場の期待には影響を与えていない。英利上げ期待が後退しても、来週のECB理事会での0.75%ポイントの利上げ期待はそのまま温存されている。短期金融市場では来週のECB理事会での0.72%ポイント以上の利上げ、年内に計1.40%ポイントの利上げを織り込む展開が続いている。
きょうのポンドドルはNY時間に入って下げ渋る動きが見られているものの、きょうは戻り売りが優勢となっており、一時1.12ドル台に下落する場面が見られた。英政府が大半の減税計画を撤回したことで、安心感からポンドは買い戻しが膨らんでいるものの、減税撤回で今度は英国の弱いファンダメンタルズがポンドのさらなる上昇余地を制限するはずだとの指摘も出ている。
金融情勢は厳しい状態が続き、英経済成長を損なう可能性が高いとしている。歳出削減を含む財政政策の引き締めは景気後退の可能性を高め、4月以降のエネルギーコストへの支援縮小はインフレの高止まりを長期化させる可能性があるとしている。英国のファンダメンタルズの弱さが、当初の安堵感が薄れた後にポンド高が続くことを正当化するとは思えないという。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美