きょうのNY為替市場はドル買いが優勢となり、ドル円は145円台を再び回復。朝方発表の米雇用統計がFRBのタカ派姿勢を正当化する内容となったことから、発表後にドル買いが強まった。
非農業部門雇用者数(NFP)は26.3万人増と前回から増加幅は鈍化しているものの、力強い雇用を示している。また、失業率は3.5%と半世紀ぶりの水準に低下した。最近注目されている労働参加率が低下したことも注目される。市場は、パンデミックで労働市場から離れていた潜在労働者が労働市場に戻ってくることで労働需給が改善し、ひっ迫感が緩むと期待している。しかし、今回の労働参加率低下はその期待を後退させる内容となっていた。
米雇用統計発表後に米国債利回り上昇、株安、為替市場はリスク回避のドル買いが見られている。市場ではFRBが積極引き締めを続けるとの見方から、安全資産に人気が集まっている。そのため、ドルは当面下げに転じることはないとの見方も出ている。
FRBが制限的な政策スタンスを緩和させ、さらに、地政学リスクの緩和、エネルギー供給の安定性、経済リスク軽減によって、市場のリスク許容度が向上するまでは、ドルは地合いを変えることは難しいという。
ユーロドルは下げが加速し、0.97ドル台前半まで下落している。このところのユーロの買戻しは時期尚早であり、年末までに再びユーロは下値を試す可能性があるとの指摘も出ている。ユーロ圏の低成長と高インフレは引き続きECBを苦しめ、ユーロを弱体化させるという。さらに、ウクライナ紛争および、欧州とロシアの不安定な関係の解決はまだ先のことのように思われる。欧州はエネルギー供給の問題に直面しており、ユーロはさらに悪化する可能性が高いとしている
ユーロドルをショート、下値ターゲットは0.96ドル、ストップを1.01ドルに置くよう推奨しているという。
ポンドドルは下げが加速し、1.10ドル台に下落。きょうの下げで21日線を下放れる展開が見られており、再び下値警戒感が高まっている。フィボナッチ50%戻しの水準が1.1010ドル付近に来ており、目先の下値メドとして意識される。
市場からは、ポンドドルが1.10ドルより上の水準を長期間維持する可能性は低いとの声も聞かれる。英国債市場の脆弱性と英財政および経常収支の悪化を考慮すると、1.10ドルを超える現在の水準は維持できないという。1.10ドル以下の水準に下落するかどうかではなく、いつ下落するのかの問題だとしている。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美