今回の為替介入は、米財務省は容認に姿勢を示したものの、他国とのコンセンサスはなく、日本の単独介入と思われる。海外勢からは持続性に疑問も示され、円安の流れに変化を与える可能性は低いとの辛辣な評価が相次いでいる。持続性が無ければ、インフレ抑制への効果もほとんど期待できない。
ただ、あえて好意的に取れば、今後、145円の水準に心理的プレッシャーが形成される可能性があるほか、円安効果もあり、日本の外貨準備はかなりの含み益が積み上がっているものと思われる。介入の形で利食いを出すことによって、何らかの財源を捻出の効果もあるのかもしれない。
前日のFOMCでFRBがタカ派姿勢を更に強めていることが示唆されたことから、市場のドル買いの雰囲気は根強い。前日のFOMC委員による金利見通しでは今年末の金利予想の中央値が4.125%(4.00-4.25%)、来年末が4.625%(4.50-4.75%)となっていた。これを受け市場では、今年はさらに計1.25%ポイントの利上げの可能性が見込まれている。11月に0.75%ポイント、12月に0.50%ポイントの利上げを実施。
さらに来年については、2月から3月のFOMCにかけてさらに計0.50%ポイントの利上げを見込んでいるようだ。来年の利上げについては、いまのところ確率は五分五分といったところだが、FRBは労働市場を冷やすために、第1四半期も引き締め路線を継続する可能性が高いとの指摘は少なくない。その場合、GDPの伸びは1%以下となり、失業率も上昇。それまでに、経済・金融情勢は利上げサイクルの一服を正当化できるほど引き締まる可能性があるという。
ユーロドルは下値模索が続き、0.98ドル台での推移が続いている。2002年以来の安値水準で推移しているものの一向に買い戻しを強める気配はない。前日にFRBは3回連続の0.75%ポイントの大幅利上げを実施し、予想以上にタカ派姿勢であることも示唆していた。各国中銀が前倒しで引き締めを急ぐ中、ECBの利上げ前倒しへの期待も高まっている。短期金融市場ではECBが来年5月までに中銀預金金利を現在の0.75%から3.00%まで引き上げると予想。これは月初の予想の2倍の水準となっている。
市場からは、「短期的なインフレは中央銀行が望んでいるよりも厄介で予測も難しい。今後数週間は、インフレ低下に明確に焦点を当てたタカ派的なレトリックが続くと予想される」との声も出ている。ラガルドECB総裁は今週初めに、史上最速の金利変更と呼ぶ利上げ前倒しの後でも、金利は今後数カ月でさらに上昇すると述べていた。
ただ、ECBも利上げ前倒しの観測が強まっているものの、FRBが想定以上にタカ派姿勢を強める中、まだ、ユーロドルの反応は限定的な状態となっている。
ポンドドルは上値の重い展開。この日は英中銀金融政策委員会(MPC)の結果が発表され、0.50%ポイントの利上げを決めた。ただ、直後のポンドの反応は売り。市場の一部からは、0.75%の利上げへの期待もあった。実際、政策委員9名のうち3名は0.75%利上げを主張していた。5名が0.50%、1名が0.25%を主張。また、英中銀は10月にインフレが11%弱でピーク付けると見込み、これまでの10月に13.3%でピークから下方修正している。更に英中銀は成長見通しも引き下げ、7-9月期のGDP予想をマイナス0.1%と、第2四半期から第3四半期にかけて定義上のリセッション(景気後退)入りを見込んだ。
これらを受け、短期金融市場でも英中銀の利上げ見通しが下方修正されており、為替市場でもポンド押し下げ要因となっている。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美