今週発表の米消費者物価指数(CPI)を機に市場は、米国のインフレ期待のピークアウトとFRBの想定される引き締めをある程度織り込んだのではとの見方が広がっていた。米国債利回りも政策金利に敏感な2年債を中心に下げが強まり、それに伴って上昇していたドルも戻り売りを強めていた。しかし、明日からのイースター休暇を前に、きょうは再びインフレ懸念を強めたようだ。
ドル円はアベノミクス時の高値125.85円付近を上回る水準で推移しているが、上値抵抗も根強い模様。その水準を突破し、130円を目指す展開になるか注目される。
ユーロドルは下げ幅を広げる展開となり、3月に付けた直近安値で、強い下値サポートとして意識されていた1.08ドルを一時割り込だ。ストップを巻き込んで一時1.0760ドル付近まで下落。この日のECB理事会を受けて売りが強まった。ECBは最近の経済指標から第3四半期に資産購入を終了する可能性の再言及した。一部からは、ECBは利上げの地ならしのために、その時期を前倒しして来ると予想していたが、この見方に反した格好。
ECBは利上げについて具体的なガイダンスは示さなかったが、市場は9月の利上げ開始の可能性を高めている。ラガルド総裁は会見で、利上げは資産購入終了後に早ければ1週間後に実施する可能性に言及した。6月に予定されているスタッフ見通しが、タイミングを決定する上で重要な役割を果たすと思われる。FRBや英中銀を始め、他の中央銀行が独自の利上げサイクルに着手する中で、ECBとの格差が拡大しており、ユーロを圧迫している。
ただ、「7月の利上げはまだ選択肢にある。ECBの政策委員は7-9月期の0.25%利上げに支持を強めている。ECB政策委員の数人が国債購入の早期終了を主張していた」などといった報道も流れていた。なお、ラガルド総裁は新型ウイルスに感染したため自宅からオンライン形式で会見に臨んだ。
ポンドドルも戻り売りに押された。ポンド自体の売り材料は見当たらないが、この日のECB理事会を受けてユーロドルが下落しており、ポンドドルも連れ安となった模様。一時1.3035ドル付近まで下落した。
英経済の見通しに対する警戒感から、英中銀が利上げに慎重なアプローチを維持した場合、ポンドは下落する可能性があるとの指摘が出ている。英インフレの高騰を考慮すると、英中銀はそろそろ政策に対して、より引き締め気味の響きを持たせる必要があるが、消費者の生活費が高騰する中で、成長への不安感も同時に強まっており、英中銀はこれまでよりも利上げに一歩距離を置いている状況。もし、このまま引き締めに前向きな姿勢を示さなければ、市場はビハインド・ザ・カーブに陥ることを恐れたり、スタグフレーションを恐れたりするリスクに直面することになるという。どちらのケースでもポンドに圧力がかかる可能性があるとしている。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美