トラス政権の大型減税策で市場は英国の財政不安が強まっており、英国債市場は不安定な動きとなっているが、英中銀が緊急で買い支えし、市場を落ち着かせていた。英中銀は週末の14日を購入期限としていたが、なお、不安定な値動きを見せていることから、市場の一部からは延長があるのではとの期待も出ていた。
前半はドル買いが一服し、ドル円も145円台半ばまで伸び悩んでいたが、米株式市場も失速する中、ドル円は145円台後半に戻している。9月22日の財務省による為替介入から2週間余りで、その水準に戻した格好。ただ、ロング勢も146円台には慎重になっている状況。
根強いFRBの利上げ期待とリスク回避のドル高の中で、ドル円は財務省の介入水準まで戻ってしまったが、ロング勢はさらに上値を試すとの見方は根強い。オプション市場でも上値リスクを意識した取引が活発に行われている模様。財務省は為替介入によりドル円を押し下げようとしているのではなく、あくまで、投機筋などによる過度に急激な変動を抑制しようというスタンス。それが米国とのお約束でもあろう。
現在のドル円の上昇トレンドに変化を与えるには、FRBがタカ派スタンスを緩めるか、日銀が量的緩和を解除するかどちらかだという。しかし、いまのところはその気配はなさそうだ。
ユーロドルは0.97ドル台後半まで買い戻されていたが、0.97ドル台前半に戻す展開。ユーロドルへの弱気な見方は根強い。ユーロ圏の経済見通しが弱いことと、FRBのインフレ抑制への固い決意が引き続きユーロドルを圧迫すると指摘。ユーロ圏のGDPはこの先3四半期連続のマイナス成長が見込まれる中、景気循環に敏感なプロシクリカルな通貨であるユーロにとってはいまは輝く時ではないという。一方、FRBは引き締め政策を継続し、政策金利を現在の3.00-3.25%から来年前半には4.50-4.75%のピークまで引き上げると見られており、ドルはさらに強くなる可能性があるとしている。
ポンドドルはベイリー英中銀総裁の発言を受けて、一気に失速し、1.10ドル台を再び割り込んでいる。一時1.11ドル台半ばまで買い戻されていた。英国債の売りは英長期金利を上昇させているものの、ポンドの重石となっている。英国は慢性的な経常赤字を抱える中で、市場は財政安定への懸念を高めている。
英経済は景気後退の可能性が懸念される中、英雇用市場にはまだその兆候がほとんど見られていない。この日発表の6-8月のILO平均失業率は3.5%に低下し、賃金上昇率(除く賞与)も前年比5.4%まで加速していた。
しかし、こうしたポジティブな数値は、いくつかの懸念すべき根本的な傾向を覆い隠しているという。雇用者数はまだパンデミック前の水準を遥かに下回っており、非労働人口(仕事をせず、求職活動もしていない人)の数は、パンデミックが始まって以来50万人超増加している。また、長期疾病に分類され、労働市場から外れている人の数も増え続け、過去3カ月のデータだけでも17万人近く増えているという。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美