トラス英首相の経済政策の発表で英国債とポンドが不安定になっている。英国債は急速に売られ、利回りが急上昇していたが、英中銀がきょう英国債の無制限購入を発表し、ひとまず落ち着いている。それを受け英国債と伴に米国債利回りも急低下している。
ドル円は戻り売りに押されているものの、しっかりとした値動きは続いている。ただ、145円台をうかがう動きはあるものの、財務省による為替介入への警戒感もあり、145円台には慎重なようだ。日本の財務省は先週22日の為替介入で3.6兆円相当のドルを売却した可能性が高いとの推計も出ており、市場からは、同様規模の介入を4-10回実行できる可能性があるとの指摘も出ている。ドル高期待は根強いものの、本日のドル円の値動きを見た限りにおいては、ロング勢も再び145円から上の水準を試すのには慎重になっているものと思われる。
ユーロドルは急速に買い戻しが膨らんでいる。ロンドン時間には0.9535ドル付近まで下落し、2002年以来の安値水準を更新していたが、NY時間に入って0.97ドル台まで買い戻される展開。過熱感を測るテクニカル指標であるRSIは一時30を下回り、売られ過ぎのサインも出ていた。
ECBの大幅利上げ期待が高まっており、10月の理事会では0.75%ポイントの利上げがコンセンサスになりつつあるようだ。加盟国の中銀総裁からも0.75%ポイント利上げを支持する声が複数出ている。
ただ、冬場にかけての景気後退への不安から、ユーロに強気な見方は少ない。一部からは、もし寒い冬となり、再生可能エネルギーの電力が減少し、ロシアからのガスが完全停止すると仮定した場合、ガス価格は約300ユーロメガワット時までの上昇が推測され、輸入ガスへの支出はGDPの7.1%に増加する可能性があるという。その場合、第4四半期と23年第1四半期の冬場の2四半期で成長を2.6%縮小させる可能性があるという。
ポンドドルは買い戻しが膨らみ、ストップを巻き込んで1.08ドル台後半まで急速に戻している。英中銀の発表でひとまずポンドも落ち着いている模様。
英中銀の発表を受けたポンドの反応は、発表直後こそ買いが強まり急伸したものの、その後、直ぐに売りが強まり、1.0550ドル近辺まで急落した。英中銀の英国債購入は市場を落ち着かせる行動ではあるものの、同時に量的緩和(QE)にもなる。現行の方向性とは真逆の行動。ただ、NY時間に入ってドルの戻り売りが強まっていることで、短期のショート筋によるショートカバーが活発に出ているようだ。
ただ、ポンドの下値不安が解消されたわけではない。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美