前日は日銀が金融政策を据え置いたことをきっかけにドル円は買いが加速し、一時131円台まで上昇した。本邦勢がきょうから大型連休に入ることもあり、ショートポジションの巻き戻しも活発に入っていたものと思われる。
ただ、ここに来てその動きも一服し、市場は来週のFOMCの結果を受けた市場の反応を待ちたい雰囲気が出ている。市場では0.50%の大幅利上げが確実視されている。市場はまた、6月、7月の連続での大幅利上げを織り込んでいるが、その辺も確認したい意向が強いものと思われる。市場では6月に0.75%の利上げ確率をほぼ五分五分で織り込む動きも見られている。
きょうは1-3月期の米雇用コスト指数が発表され、賃金は前年比4.7%上昇し、過去最高記録した。諸手当も4.1%増加し、民間部門の賃金・給与は5%伸びた。雇用コストが健全な伸びを続けていることは、インフレ形成で賃金上昇が重要な要素であることを浮き彫りにしている。パウエルFRB議長は、現在の賃金上昇ペースは2%のインフレ目標と整合しないと述べていた。
FRBは需要サイドに圧力をかけインフレを抑制しようとしている。急速な利上げによって経済に圧力がかかり、インフレの素となっている賃金の伸びが抑制され、それが実質所得に打撃を与え、需要が減速する。最終的にインフレも低下するという考え方に基づいているのであろう。ただし、それは非常に特殊な条件下でのみ実現する可能性が高いと懐疑的な意見も聞かれる。
ユーロドルは下げが一服し、1.05ドル台を回復。ロンドンフィキシングにかけてドル売りが強まり、ユーロドルは1.05ドル台半ばまで買い戻された。ただ、全体的に上値の重い展開に変化はない。
きょうは4月のユーロ圏消費者物価指数(HICP)の速報値が発表になり、前年比7.5%と高い伸びを示していた。市場からは、ユーロ圏のインフレは簡単には収まらないとの声も出ている。ウクライナ危機により、エネルギー価格がしばらく高止まりしそうな気配があるうえ、中国でのロックダウンによって、サプライチェーン問題が悪化している。その結果、生産コストが上昇し、企業がこれまで以上に消費者に転嫁する可能性があるという。エネルギー価格の上昇幅が年内に大幅に縮小したとしても、インフレが再び7%を下回るのは、恐らく年後半になるという。
ポンドドルも買い戻しの動きが出ている。前日は1.25ドルを割り込む展開を見せていたが、きょうは1.26ドル台まで買い戻される場面も見られた。ポンドドルはさらなる下落の可能性が依然として根強いものの、英中銀の追加利上げへの期待から、ユーロに対しては上昇を拡大する可能性があるとの見方が出ている。ポンドが下落するとすればドルの動きによるところが大きいという。
来週の英金融政策委員会(MPC)では0.25%の追加利上げが期待されている。ECBも早ければ7月にも利上げとの観測が出ているが、それでも英中銀とECBの金融政策の差は当面縮小しない可能性が高い。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美