市場の反応は鈍かったものの、前日のパウエルFRB議長の講演はこれまで以上にタカ派な印象ではあった。当面はFRBの大幅利上げが続くとの見方に変化はない。ただ、現在の市場は利上げ自体の行方以上に、それに伴う景気への影響を警戒している。景気後退やスタグフレーションといった言葉は飛び交う中で、ドル円は次第に上値を重くしているようだ。FRBはインフレ抑制のためにどこまで踏み込むのか。それがはっきりするまで不安定な状態が続くとの指摘も出ている。
一方、日本のインフレは欧米などの主要国と比較すれば、明らかに抑制されている。足元の経済指標からすれば、日銀は引き締めを急ぐ必要はなく、世界経済がさらに不透明になれば、日銀の引き締めへの期待はさらに後退する可能性もある。ただし、その場合のシナリオは円高の可能性も留意される。
ユーロドルは戻り売りが強まり、1.05ドルを再び割り込み、1.04ドル台半ばまで下落。ユーロドルは前日の買い戻しで一気に節目の1.05ドルを回復し、本日は1.0560ドル付近まで上昇していた。本日の21日線が1.0575ドル付近に来ており、その水準を試すかにも思われたが、本日のリスク回避の雰囲気に失速した格好。
市場からは、ユーロドルの戻りは限定的との見方も出ている。市場がECBの利上げ見通しを過度に織り込んでいることが背景にあるという。市場は現在、7月に利上げを開始し、年内に1.00%の利上げを実施し、マイナス0.50%の中銀預金金利をプラス0.50%まで引き上げる見通しを織り込んでいる。
また、市場はECBの引き締めを過度に織り込む一方で、FRBについてはそうではないと指摘している。米国とユーロ圏の成長格差が夏にかけてより明確になり、エネルギーを巡るEUとロシアの対立により、その傾向はさらに強まると指摘。ユーロドルの戻りは1.0650ドル-1.0700ドル付近で勢いを失うと見ているという。
ポンドドルも戻り売りが強まり、1.23ドル台前半まで下落。本日の21日線は1.2510ドル付近に来ているが、到達することなく失速した格好。
この日は4月の英消費者物価指数(CPI)が発表になり、総合指数は前年比9.0%と1982年以来、約40年ぶりの高水準となった。既に苦しい家計に圧力がかかったとのことで、発表後のポンドの反応は売りだった。エコノミストからは「英インフレは完全に制御不能であり、インフレ高騰が可処分所得に悪影響を及ぼしていることは間違いない」とのコメントも出ていた。
しかし、市場からは英インフレが9%に達したことは英中銀の予想通りでもあり、短期的に何らかの政策変更をもたらす可能性は低いとの指摘も出ている。英中銀はインフレ急騰を極端に心配することはなく、今回のインフレ急騰は電力・ガスなどのエネルギー価格上限を大幅に引き上げたことによるほか、3月の賃金急上昇もボーナスの増加によってもたらされたためだという。年内の利上げは0.25%ずつあと2回を予想しているという。
英消費者物価指数(4月)15:00
結果 2.5%
予想 2.5% 前回 1.1%(前月比)
結果 9.0%
予想 9.1% 前回 7.0%(前年比)
結果 6.2%
予想 6.1% 前回 5.7%(コア・前年比)
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美