ブレイナードFRB理事の発言をきっかけに市場は、FRBの積極引き締めへの期待を一層強めている。理事は「バランスシートを5月にも急速なペースで縮小」と述べていた。次の日に公表された3月分のFOMC議事録でも0.50%の大幅利上げのほかに、バランスシート縮小を打ち出す可能性を示唆している。米国債を月650億ドル、MBSを300億ドル、計950億ドルずつの縮小という具体的な数字も挙がっており、規模については3ヵ月ごとに見直すのであろう。日銀はもちろんのこと、ECBや英中銀と比較してもFRBの引き締めへのスピード感は明らかに違い、投資家は再びドルに資金を流入させているようだ。
「キング・ドル」(海外ではたまに見かける表現)には死角はないのであろうか。米大手金融からは、資本フローの3つの変化がドルにとってマイナスになる可能性があるとの指摘も出ている。ECBのマイナス金利解除、株式リターン低下による米国からの資金流出、そして、3つ目は「脱ドル化」への動きを挙げている。
特に脱ドル化については、ドル中心の決済ネットワークの縮小や地政学的理由からの公的機関によるドル離れを想定している。ウクライナ危機に対するロシアへの制裁にドル決済の禁止が導入されている。今回のみならず、対中国でもドルが制裁手段として使用されてきた。実際、サウジアラビアが原油輸出の決済通貨を一部、人民元など他の通貨への変更を検討しているとのニュースが流れていた。今後、貿易決済における脱ドル化が他にも拡大するようであれば、構造的なドル弱気ケースに拍車がかかるという。中国や中東などは積極的に検討しているようだ。
ただし、ドルの優位性を奪うと言うのは簡単だが、その実現は困難というのもまた結論としてある。ドルに変わる有効な代替資産を見つけるのは至難の業だという。経済的にも、政治体制的にも、安全保障面でも、米国ほど安定した国も少ない。そして、何よりも人民元にはない透明性と公正性も兼ね備えている。
IMFのデータでは、各国の外貨準備に占めるドルの割合は概ね6割強といったところだが、世界での流通量も他の通貨とは格段に違う。使い易いく、安定的で信頼感があるという点で、いまのところドルに並ぶ通貨はないほか、第2のドルとも言われている米国債は、なお最も安全な資金保存手段の一つとなっている。短期的な上下動は別にして、基本的なドルの優位性はしばらく変わらないのであろう。
◆来週以降4月29日までに各ポイントを1度でも付ける確率
()は先週末
128円:17.4%( 8.7%)
127円:32.0%(15.9%)
126円:53.3%(27.1%)
124.34円(週末終値)
120円:10.4%(43.3%)
119円: 4.5%(27.0%)
118円: 1.6%(15.3%)
◆来週以降5月31日までに各ポイントを1度でも付ける確率
()は先週末
128円:37.0%(20.7%)
127円:51.1%(29.9%)
126円:67.9%(41.6%)
124.34円(週末終値)
120円:30.7%(58.0%)
119円:20.5%(43.5%)
118円:12.9%(31.1%)
※ドル円のオプション取引から算出
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美
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次回は4月23日(土)午前の配信を予定しています。
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