短期金融市場では次回6月のFOMCでの0.75%の利上げを完全に織り込む水準まで期待を高めていたが、一気に後退させている。大幅利上げへの期待は依然として高いものの、議長の会見は、市場の行き過ぎた期待に冷水を浴びせた格好となった。
なお、今回のFOMCでは0.50%の大幅利上げと9兆ドルまで拡大しているバランスシートの縮小を打ち出した。バランスシート縮小については、6月から月475億ドルで開始し、縮小ペースは3カ月後に最大月950億ドルまで拡大するとしている。FRBが0.50%の利上げを実施したのは2000年5月以来。
そもそも、0.75%の利上げ期待というのはどこから出てきたのであろう。FOMCメンバーの中でもタカ派の急先鋒になっているブラード・セントルイス連銀総裁が0.75%の利上げの検討に言及したのがきっかけであろう。ブラード総裁は金融政策の軸足を雇用からインフレにシフトさせ、パンデミック後の異常とも言える刺激策を終了させることに賛同した最初のFOMCメンバーの1人。3月のFOMCでも0.50%利上げを主張していた。
ブラード総裁は最近、FRBが1994年11月に積極引き締め策の一環として0.75%の利上げを実施したことに言及。FRBはその当時、政策金利を3.00%から6.00%まで引き上げている。その積極策が功を奏し、米経済は1990年代後半から、米経済史上最高の時期の1つを迎えることになったとブラード総裁は述べていた。ただ、ブラード総裁本人も0.75%利上げには恐らく正式には賛成しないと述べており、他の複数のFOMCメンバーも0.75%利上げが必要なのか疑念を表明していた。
パウエルFRB議長は今回の会見冒頭で「インフレはあまりにも高過ぎる」と述べていたが、確かに米インフレは受け入れ難いほど上昇している。そのような中で、市場も過激なほど利上げ期待を高めてしまったといったところであろう。
FRBの積極利上げによる急速な需要減から来年の米経済は景気後退に陥るとの観測も出ている。そのような中でFRBも市場の過激な期待を調整したかったのかもしれない。とはいえ、ドル買いの流れが終了したわけではないことは意識しておくべきであろう。
ドル円の確率は依然と上値期待が高い状況が続いている。来週以降5月末までに133円に一度でも到達する確率は前週の45.9%から51.8%に上昇。一方、127円の確率は56.4%から36.4%に低下した。
確率的には「FOMC通過後も上値期待は温存」といった印象だ。
◆来週以降5月31日までに各ポイントを1度でも付ける確率
()は先週末
135円:24.7%(24.1%)
134円:36.6%(33.8%)
133円:51.8%(45.9%)
130.56円(週末終値)
127円:36.4%(56.4%)
126円:24.1%(42.5%)
125円:15.0%(30.7%)
◆来週以降6月30日までに各ポイントを1度でも付ける確率
()は先週末
135円:42.7%(38.2%)
134円:53.4%(47.4%)
133円:65.6%(57.9%)
130.56円(週末終値)
127円:55.5%(68.3%)
126円:44.5%(57.1%)
125円:34.7%(46.8%)
※ドル円のオプション取引から算出
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美
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次回は5月28日(土)午前の配信を予定しています。
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