ドル円は米雇用統計発表直後こそ、米10年債利回りの上げと伴に140.80円近辺まで急上昇したが、その後は戻り売りが強まり、一時140円を割り込む動きが出ていた。ただ、ノルドストリームでドル買いが強まる中、下値もサポートされ140円台は維持した。
米雇用統計については、依然タイトな米労働市場に若干の緩和の兆しを見せた。非農業部門雇用者数(NFP)は31.5万人増と予想を若干上回った一方、失業率は3.7%に悪化した。注目だったのが労働参加率が62.4%に上昇したこと。特に女性が参加率を押し上げたようだ。パンデミックで労働市場から一時離れていた人々が戻りつつあるのかもしれない。労働人口が増加するにつれ賃金の伸びは鈍化し、いずれインフレの落ち着きに貢献する可能性がある。
先週のパウエルFRB議長の講演から、市場はタカ派なFRBを警戒していたが、きょうの米雇用統計はその懸念を一服させている模様。今月のFOMCでの0.75%ポイントの利上げ期待は依然として高いが、確率は従来の70%から55%程度に低下した。
米雇用統計を受けてユーロドルはパリティ(1.00ドル)を再び回復していたが、ノルドストリームのニュースで失速し、0.99ドル台半ばまで急落。
来週はECB理事会が予定されており、0.50%か0.75%ポイントのいずれかの利上げが実施されるとみられている。市場では後者のほうが有力視されているようだ。不確実性は高いものの、0.75%ポイントの利上げの根拠のほうがより説得力あるという。ただ、引き締めのペースはその後に緩やかになるとも指摘しており、9月に0.75%ポイントの利上げを実施した後は、10月に0.50%、12月と来年2月に0.25%ポイントずつの利上げを予想している。
エネルギー危機の不確実性により、2023年の見通しは不透明だが、ECBは景気後退が発生した時点で利上げサイクルを一時停止することが予想されるという。なお、ECBが来週の理事会で0.75ポイントの利上げを決めた場合、この幅の利上げはECBとしては初めてとなる。ちなみに、ドイツ連銀が0.75%ポイントの利上げを実施たのは1992年までさかのぼる。
ポンドドルも失速。米雇用統計を受け一時1.15ドル台後半まで買い戻されていたが、一時1.15ドルを割り込む場面も見られた。
来週月曜日に英保守党党首選の決選投票の結果が発表され、事実上の次期英首相が決定する。トラス外相が最有力候補とみられているようだ。ただ、同外相は英中銀の独立性を疑問視しているほか、EUとの緊張を高め、ポンドは下落の可能性も指摘されている。
英中銀の独立性が脅かされれば、ポンドにとっては相当な逆風となるほか、同外相は北アイルランド議定書16条を発動し、EU離脱協定を無効化する可能性もあるという。最悪の場合、EUが自由貿易協定を打ち切る可能性があり、貿易戦争に発展する危険性がある。EUとの緊張が再び高まれば、英資産、ひいてはポンドに大きな逆風となる可能性が高い。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美