今回の米CPIに市場からは、インフレのピークアウトへの期待が高まっている。夏までにCPIはピークに達し、個人消費支出デフレータ(PCE)は6%ー7%の間のどこかでピークを迎え、今年後半から来年にかけて3%―4%まで下がることが期待できるとの見解も聞かれた最近の米インフレの急上昇でFRBの金融引き締めへの期待を高めている。FRBは前回の会合で利上げを開始し、年内はさらに加速度的に引き締めを行う姿勢を示唆しているが、若干緩むのではとの期待にもつながっていたようだ
ドル円も一時124円台に下落する場面が見られたが、しばらくはFRBのタカ派姿勢に変化はないとの見方も根強く、また、本日は原油相場が100ドル台を回復したことから、インフレへの懸念が再燃し、ドル円も125円台に戻している。
ユーロドルはこの日の米CPIを受け1.09ドル台に戻す場面が見られたものの、買戻しの流れを維持できずに逆に1.08ドル台前半まで下落する場面が見られた。FRBの積極引き締めとドル高への期待が根強い中で、ユーロドルは依然として上値が重い。
2月と3月のユーロ圏の指標は、ユーロ圏経済がウクライナ危機の初期の影響に対して耐性があったことを示唆しているが、これを危機の影響が限定的であることの証拠と解釈すべきではないとの指摘が出ている。危機と制裁による混乱が毎月生産に影響を与え、エネルギーと食品価格の高騰が家計の購買力を低下させ、成長は減速するとしている。危機が成長に与えるマイナスの影響を示す証拠は、時間の経過と伴に現れるという。より重要なポイントは、夏以降の成長見通しの悪化により、最終的にECBが利上げサイクルの開始を延期する可能性があることだという。
ポンドルも序盤は買い戻しが優勢となり、一時1.3055ドル付近まで上昇したものの、後半になると1.30ドル割れを試す展開となった。
この日は英雇用統計が発表され、2月に続いて労働市場のひっ迫を示していた。しかし、この傾向が勢いを増すことはないというシグナルも発せられているという。失業率の低下と過去最高の求人を通じた労働需要のひっ迫が何カ月も続いた後、失業率、求人とも安定化の兆しを見せ始めているという。足元の英労働市場は非常にタイトな状況を示しているが、ひっ迫感はピークを迎えつつあるとの見方を再確認させるものだとしている。賃金の伸びについては、継続的な賃上げが英中銀を5月の追加利上げに向かわせると考えるが、それはインフレ上昇による打撃を相殺せず、所得への圧迫は英中銀の予想よりも大きくなる可能性もあると指摘している。
ポンドにとってはネガティブな状況だが、ここ数日1.30ドルを割り込むと買い戻される展開が続いている。この3日間のチャートのローソク足はいずれも下ひげを付けており、テクニカル的には一旦リバウンドが期待される形状が示現している。明日は消費者物価指数(CPI)を始めとした一連の英物価統計が公表されるが、内容次第では買い戻しが強まるのではとの期待も一部ではあるようだ。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美