4月の米CPIは総合指数で前年比8.3%、前月比0.3%と前回から伸びが鈍化したものの、市場はインフレへの懸念を温存している。コア指数の前月比の伸びが予想以上に続いていることで基調インフレは加速との指摘も出ている。
医療、レクリエーション、通信などのサービス部門に価格上昇が見られ、人件費の上昇が価格に転嫁されている気配も出ている。「サービス価格がさらに上昇し続ければ、FRBは賃金と物価のスパイラルの否定がますます難しくなり、それを認識することがさらなるタカ派リスクになる」との指摘も出ていた。
市場では、今回の米CPIはインフレがピークに達している兆候を示すとの期待も出ていた。確かに総合指数は前回よりも伸びが鈍化していたものの、ピークアウトへの確信には至っていないようだ。
為替市場のドル高期待に変化はなさそうだが、きょうは材料出尽くし感も出ている模様。
ユーロドルは1.05ドル台での推移が続いている。米CPIを受けてユーロドルも1.05ドルちょうど付近まで一時下落した。しかし、ドル買いの動きは一時的でユーロドルも直ぐに発表前の水準に戻している。ドルロング・ユーロショートがかなり積み上がっている中、きょうの米CPIはポジション調整のきっかけとなったようだ。
米CPIはFRBの積極利上げ期待を裏付ける内容となったが、ここに来てECBの早期利上げ期待も強まっている。これまで慎重だったECBも、このところタカ派なレトリックを強めており、多くのECB理事が6月か7月の利上げに言及している。市場では年末までにECBが3-4回の利上げを行い、中銀預金金利をプラス圏に浮上させるとの観測が強まっている状況。
きょうはラガルドECB総裁がスロベニア中銀主催のイベントで講演していたが、年内の利上げ開始を明確に示唆し、利上げを求めるECB理事が増えていることも明らかにした。資産購入を第3四半期に終了する可能性が高く、その後、“しばらく”して利上げが行われることになるとも述べた。総裁は、「しばらく」という表現が曖昧であることを認めた上で、それは数週間程度になる可能性があるとも付け加えた。ただ、ECBの正常化プロセスはあくまで段階的であり、投資家はFRBや英中銀のような積極利上げを期待すべきではないとも付け加えていた。
ポンドドルは下値模索の動きが続いている。米CPIの発表を受けて一時1.22ドル台に下落した後に直ぐに反転し、今度は1.24ドル付近まで上昇。しかし、再び戻り売りに押される目まぐるしい展開が見られている。いずれにしろ、ドル主体の動きでポンド自体の動きはない。
ポンドの目下の話題は、トラス英外相が北アイルランド議定書の一部破棄のための法案を作成したと報じられ、EUとの貿易交渉を巡る不透明感が再び強まっていること。英政府がそのような法案を議会に提出した場合、EUからの報復措置を誘発し、ポンドにとってはマイナスとの指摘も出ている。
一方、EUとの協議が難航する中、英政府がEUからの譲歩を引き出したいための行動というよりも脅しに近い可能性もあるとの指摘も出ている。英国は以前にもこのような圧力をかけたが、望む結果は得られておらず、懐疑的だという。議定書を破棄することは英政府が将来貿易協定を結びたい相手国、特に米国を激怒させるリスクがあるとも指摘。英政府がEUとの貿易戦争の火種になることを行うことを過度に心配する必要はないという。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美