インフレ指標はソフトランディングのシナリオを後押しするものだが、経済とFRBの方向感がまだあいまいな状況下で、いまは市場が大きな方向性を示す時期ではないとの指摘も出ていた。
インフレ鈍化を示す新たな証拠により、市場はFRBの利上げ幅が縮小するとの期待を高めている。9月のFOMCでの0.75%ポイント利上げへの期待を後退させ、逆に0.50%ポイント利上げへの期待を高めている。短期金融市場では現在、0.50%ポイントの利上げを行う確率を57%と見積もっており、0.75%ポイントは43%となっている。
ただ、「高インフレは若干緩やかになったものの、問題はまだ消えていない」との慎重な声も聞かれる状況。この2日間のインフレ指標に過度に反応し過ぎで、下値ではドルの見直し買いが出たのかもしれない。
きょうのユーロドルはこの日の米生産者物価指数(PPI)を受けて1.0365ドル付近まで上昇したものの、1.03ドル台前半に値を落とす展開。ただ、本日1.0195ドル付近に来ている21日線を上放れる展開に変化はなく、7月中旬以降の緩やかなリバウンド相場の流れは維持している。
ただ、ユーロドルは再びパリティ(1.00ドル)を試すとの見方は少なくない。今後1カ月でパリティに戻る可能性も指摘している。「米インフレはピークに達した兆候も出ているが、リスク資産はまだ危機を脱したとは言えない。そのため、安全資産としてのドルの地位は世界成長の弱い見通しから恩恵を受ける可能性がある」という。
パリティを下値ターゲットとし、1.0550ドルにストップロスを置く戦略を推奨している。
ポンドドルはこの日の米PPIを受けて、1.2250ドル付近まで上昇したものの上げは続かず、1.21ドル台に値を落としている。ただ、本日1.2075ドル付近に来ている21日線を上放れる展開に変化はなく、7月中旬以降のリバウンド相場の流れは維持。
しかし、弱い英成長見通しがポンドの足かせになるとの見方も出ている。英中銀はタカ派姿勢を堅持しており、市場では次回の金融政策委員会(MPC)でも0.50%ポイントの利上げを見込んでいる。ただ、英成長見通しが弱いため、英中銀の利上げからポンドが大きな支援を受けることはできないとの指摘も出ている。
英国の生産性の低さを巡る長期的な問題と、EU離脱のメリットをめぐる英政府の明確な方向性の欠如も、投資水準の低迷とポンドの不振に繋がると考えられるという。英国では大幅な経常赤字の状態が続いており、英国のファンダメンタルズの背景は海外の貯蓄者にとって魅力的ではない。そのため、ポンドは売られ易いという。
ポンドドルは今後1-3カ月で現在の1.22ドル台から1.20ドル台を下回る可能性があるとも指摘した。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美