しかし、市場からは、FRBはインフレとの闘いから脱却しそうにないため、ドル下落は恐らく長続きしないとの声も根強い。FRBの積極的利上げの結果、景気は悪化し始めているが、複数のFOMC委員は「成長や雇用を阻害することはインフレ抑制のための代償である」と述べている。インフレが鈍化するまで、ドルは主要通貨の中で傑出したパフォーマンスを維持する可能性が高いという。
ただ、11月2日のFOMCの結果発表を確認するまでは、利上げペース減速を意識した取引が続く可能性はありそうだ。
ユーロドルはパリティ(1.00ドル)を回復。1.00ドル後半まで上昇した。明日のECB理事会を前にリバウンド相場に復帰するか、注目の展開が見られている。
明日のECB理事会は0.75%ポイントの大幅利上げが見込まれている。ただ、市場はそれを十分に織り込んでおり、ユーロ高の反応を見せるかは未知数。むしろ、金利については12月理事会への見方が二分しており、0.75%ポイントの利上げを続けるとの見方の一方、0.50%ポイントに減速させるとの見方もあるようだ。何らかのヒントが出るか注目される。
また、ECB理事会の焦点がバランスシートに移行する可能性があるとの指摘も聞かれる。バランスシート、特に量的引き締め(QT)と条件付き長期リファイナンスオペ(TLTRO)に焦点が当てられる可能性があり、その辺も注目となりそうだ。ただ、明日に関しては、協議はするが具体的な発表はない可能性が高いとみられている。
ポンドドルは強い上値抵抗が観測された1.15ドルを突破し、1.16ドル台まで一気に上昇。市場にリスク選好の雰囲気が広がる中、景気敏感通貨の位置づけのあるポンドは買い戻しを膨らませている模様。前日にスナク政権が誕生し、ポンドにはひとまず安心感が広がっている。英政府は財政計画発表を11月17日に延期すると発表していたが、特にポンドへのネガティブな影響は見られなかった。
一部からは、ポンドはさらに上昇する可能性があるとの指摘も出ている。1.15ドルの水準を突破したことで1.1750ドルまでの買い戻しが進む展開も予想されるという。英国の見通しの再評価というよりも、世界的なリスクへの再評価によって買い戻しが進むとしている。
きょうはカナダ中銀の金融政策委員会の結果が発表され、予想外の0.50%ポイントの利上げに留めた。これを受けカナダドルは売りの反応を強め、カナダ円は一時107円台半ばに急落。ただ、リスク選好の雰囲気が広がる中で、カナダドルは売り一巡後は買い戻しが強り下げを戻している。
国内経済が景気後退に向かう中、利上げペースを緩めた格好。今後数カ月は利上げを継続する姿勢を示し、タカ派な表現も維持するが、この意外な動きはカナダ中銀が経済にさらなる打撃を与えようとする意欲に疑問を投げかけている。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美