議長は「いつか利上げペースを落とすのが適切なる。労働市場は幾分軟化する可能性が非常に高い。いつか利上げペースを落として効果を見極める可能性」などと、幾分タカ派色を和らげる発言を行ったことから、米国債利回りの下げと伴に為替市場はドル売りの反応を強めた。
ドル円はFOMCの結果を受けて、144.70円付近まで上昇後、パウエル議長の会見を受けて一時143円台半ばに急速に伸び悩む目まぐるしい展開が見られている。
一部からは、FOMCをきっかけにドルはしばらく調整に入るとの見方も出ていた。現在のドルは大きく駆け上がっており、過熱気味にもなっていることから、今後数日から数週間の間に何らかの形で調整が行われることが予想されるという。むしろ、一時的にECBの大幅利上げに市場の焦点が移る可能性があるとの声も聞かれる。その雰囲気が出たのかもしれない。ただ、中期的にはFRBのタカ派姿勢がドルを下支えするという。
ユーロドルも上下動したものの、結局、0.98ドル台に下落している。一時0.98ドル台前半まで下落し、年初来安値を更新。きょうの下げで21日線を下放れる展開を見せており、下向きの流れが加速している。FOMCを通過して今度はECBのタカ派姿勢に市場の焦点が移る可能性も指摘されているものの、ユーロドルは依然として上値が重い。明日以降、パリティ(1.00ドル)回復を目指すか、それとも下放れを加速させるか注目される。
ポンドドルは一時1.12ドル台半ばまで急落。1985年以来の安値水準を更新。FRBのタカ派姿勢の他にトラス首相の財政政策への懸念もポンドを圧迫している。財政刺激策は通常、英経済の先行きに対する懸念を和らげるが、市場では同時に、財政の持続性への疑念を煽ることになり、ポンドにとってはマイナスとの見方を有力視しているようだ。トラス英首相はきょう、法人税と国民保険料を予定通りに引き上げない方針を打ち出していた。税制の簡素化も目指すとしている。詳細は金曜日にクワーテング英財務相が発表する予定。
明日は英中銀金融政策委員会(MPC)が開催される。市場では0.50%ポイントの利上げが見込まれている。ただ一部からは、金融引き締めの前倒しが各国中銀のコンセンサスになりつつある中、英中銀は予想以上のサプライズ利上げを打ち出すのではとの声も出ている。前日はスウェーデン中銀が予想されていた0.75%ポイントの利上げではなく、1.00%ポイントのサプライズ利上げを実施していた。ただ、トラス政
権のエネルギー価格抑制策や、英景気の先行き不安が強まる中で、英中銀は0.50%ポイントの利上げに留めるとの見方が有力視されている。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美