2月16日に発表された前回のFOMC(1月25日、26日開催分)の議事要旨を確認すると、物価上昇について、予想以上に長く続いているという危機感を共有していると、警戒感を強く示しました。政策金利については、まもなく引き上げることが適切と、早期の利上げをはっきりと言及しています。
今月2日に米下院金融サービス委員会で行われたパウエル議長による議会証言でも、今回の会合で利上げに踏み切る姿勢を表明。ウクライナ危機に伴う不確実性に注意しながらも、慎重に引き締めを実施する姿勢を強調しました。
10日に発表された米消費者物価指数(CPI)は、市場予想通りとはいえ約40年ぶりの高水準となる前年比7.9%と強い数字に。ウクライナ危機による先行き不透明感もあり、今回のFOMCでの0.5%の大幅利上げ見通しはほとんどありませんが、5月以降のFOMCで大幅利上げ期待を行うとの期待が広がっています。
こうした中、注目は声明とパウエル議長による会見、さらに年4回発表されるFOMCメンバーによる経済見通し(SEP:Summary of Economic Projections)となります。
声明や会見では次回以降の利上げに向けた姿勢が注目されるところ。議長は議会証言の中でインフレが高止まりするようだと大幅利上げの可能性があることを示唆しました。こうした姿勢が強調されると、大幅利上げに向けた期待感が強まり、ドル買いにつながると期待されます。
SEPではインフレ見通し、金利見通しなどが注目されるところ。前回12月公表のSEPでは、2022年末時点でのインフレ見通しについて、PCEデフレータが2.6%(9月時点では2.2%)、コアPCEデフレータが2.7%(同2.3%)と見込んでいました。政策金利については0.9%(ようは0.75%-1.00%、9月時点では0.3%:0.25%-0.50%)という見通しになっており、年内3回の利上げが中央値でした。
SEPの中で示されるFOMC各メンバーによる年末時点での政策金利水準をドットで示したドットプロットでは、0.75%-1.00%が10名と最も多く、それ以下が6名、それ以上が2名という形でした。
これらの見通しは大きく上方修正されると見込まれています。注目はどこまで大きく上方修正されるのか。
金利先物市場動向から政策金利見通しを示すCMEFedWatchでは、次回5月3日、4日のFOMCで0.5%の利上げを35%程度見込んでいます。ウクライナ危機前には7割がたが3月か5月に0.5%の利上げを見込んでいましたので、そこからは下がっていますが、米CPIの発表前の27%程度からは上昇しており、期待感が強まってきていることが感じられます。
年末までの利上げ見通しは1.75%-2.00%が中央値に。今年残っているFOMC7回すべてで0.25%の利上げを実施した場合の水準となります。それ以上、要はどこかで0.5%の大幅利上げを行うという見通しは19.1%程度。7回のFOMC全てでの利上げではなく、どこかで据え置きを交えるという見通しは48.5%と半数弱となっています。ウクライナ危機前と比べると、0.5%を複数回行うといった極端な見方が減っただけで、7回利上げ、それ以上の積極利上げ、それ以下の利上げ見通しというくくりでは割合に大きな変化がありません。
ウクライナ危機による先行き不透明感が、利上げに対する警戒感につながっていますが、それ以上に物価高への警戒感が強く、利上げペースが続くという見方自体には変化がないといったところのようです。
FOMCメンバーによる経済見通しもこうした市場の見通しと同様の結果になるかどうかが注目されるところです。年7回の利上げや、大幅利上げ見通しにつながるような、タカ派な姿勢が示されるとドル買いの材料になります。
物価見通しも引き上げは利上げ期待につながります。9日に米下院がロシア産原油の禁輸措置法案を超党派の支持で可決。英国などもロシア産原油の禁輸姿勢に追随したことなどから、原油の需給バランスが世界的に崩れており、エネルギー価格の上昇傾向が続くと見込まれる中、物価上昇圧力は相当に強まっています。PCEデフレータ及び同コアデフレータの見通し引き上げも注目材料。前回はエネルギーと食品を除いたコアPCEの方が年末時点では高くなるという見通しでしたが、エネルギー価格の上昇継続見通しを受けて、このあたりの変化も注目されるところです。
ただ、物価見通しに関しては、GDP見通しとも併せて注目したいところ。ウクライナ危機をうけた対ロシア経済制裁により米GDPにも悪影響が出そう。物価高の中での景気鈍化という、いわゆるスタグフレーション懸念が広がると、こちらはドル売りの材料となります。
MINKABU PRESS 山岡和雅