海外市場ではドル円は、11月米小売売上高や前週分の米新規失業保険申請件数が予想より強い内容だったことが分かると一時142.28円付近まで持ち直した。ただ、米利下げ観測が高まる中、米10年債利回りが一時3.8835%前後と7月27日以来の低水準を付けると、141.40円付近まで押し戻される場面があった。ユーロドルは利下げの可能性を示唆せず、逆に物価上昇圧力は依然として強いと主張したことで全般ユーロ買いが広がると、一時1.1009ドルと11月29日以来の高値を付けた。
本日のドル円相場は、上値が重い展開を予想する。13日にパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が「利下げについて議論した」と述べたのに対し、昨日にはラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁は「利下げについては全く議論しなかった」、英中銀(BOE)金融政策委員会(MPC)議事要旨では「インフレ率を持続的に2%の目標に戻すために、十分な期間にわたって十分に制限的である必要」、7日に植田日銀総裁は「年末から来年にかけて、一段とチャレンジングになると思っている」と、米国以外は利上げもしくは高金利維持を示唆したことが、ドルの上値を圧迫するだろう。
円高が一辺倒に進んだ感があるが、1日を通しクロス円を見ると、オセアニア通貨・対円はほぼ横ばい、欧州通貨・対円は円安の動きになっている。ドル円だけが過度に円高に動いていないこともあり、ドル高の巻き戻しが対円でも入りやすい。また、米長期債利回りが7月27日以来の水準まで低下したが、同日のドル円は141円前半を頭に138.77円まで弱含んでいることを考えると、まだドル円は下値を探る余地がありそうだ。
ドル安だけでなく、週末リスクが円買いを促す可能性もある。特にリスク要因となるのが、週末の報道リスク。昨年も週末土曜日の12月17日に、日経新聞朝刊が「政府、日銀との共同声明見直し論」と報道し、2%の物価上昇目標の達成時期や範囲をより柔軟にし、表現の一部を修正との内容を報じた。18-19日に行われる日銀政策決定会合を前にし、今週末も同様にマイナス金利政策解除に向けたことを報じる可能性もあるのが円高要因になる。仮にそのような報道がない場合でも、円が売られる要素にはならないことで、週末を前にリスクヘッジとしてはドル売り・円買いの方が強くなりそうだ。
なお、本日のアジア時間では本邦から10月第三次産業活動指数、中国から11月鉱工業生産、同月小売売上高が発表される。中国の景気停滞が懸念されていることで、中国の経済指標はネガティブサプライズには要警戒となりそうだ。
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