19日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、ロンドン市場でつけた144.96円を上値に米金利が低下した場面では143.53円付近まで下押しした。ユーロドルは米金利低下に伴うユーロ買い・ドル売りで1.0987ドルまで上昇した。ユーロ円は日銀のマイナス金利政策解除への警戒感が後退したことで158.57円まで上昇した。
本日の東京外国為替市場のドル円は、植田日銀総裁が来年1月のマイナス金利政策解除を示唆しなかったことから底堅い展開が予想される。ただ上値についても、米10年債利回りの伸び悩みで限定的となりそうだ。
植田日銀総裁は、昨日の会見で、大規模金融緩和政策の継続を決定した理由として、先行きの経済情勢の不確実性が高いことを挙げていたが、政治情勢の不確実性もあるのかもしれない。
岸田首相は、先日「日銀と政府はアコード(共同声明)を通じて緊密に連携することを確認している。政府はデフレ脱却に向けて取り組んでおり、しっかりと念頭に置いて政府と連携をしていただきたい」と述べていた。昨日の日銀会合には、新藤経済財政担当相が出席しており、岸田首相の意向、すなわち、現時点では金融引き締めへの転換は受け入れられないことを伝えたのかもしれない。
また、自民党派閥の政治資金パーティーを巡る問題で政局混迷への警戒感が高まりつつあることで、景気回復への悪影響を避ける観点から、日銀は現状の金融政策の維持となったのかもしれない。
ドル円は、12月7日の植田日銀総裁の参院財政金融委員会での答弁で、「年末から来年にかけて一段とチャレンジングな状況になる」との発言を受けて、7日の高値147.32円から14日の安値140.97円まで下落。そして、昨日の植田日銀総裁の発言「国会で仕事への取り組み姿勢を問われ、一段と気を引き締めてというつもりだった」を受けて、144.96円まで戻している。
ドル円が147円台までの全値戻しとなる往って来いとはならなかったのは、13日のパウエルFRB議長の発言「利下げは視野に入り始めており、今回のFOMC会合でも議論した」を受けて、来年3月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げ観測が高まっているからかもしれない。
昨日までの日銀金融政策決定会合では、短期政策金利をマイナス0.1%に据え置くとともに、長期金利の誘導水準を「ゼロ%程度」として上限は1%を「めど」とするイールドカーブコントロール(YCC)の運用も維持した。先行きの政策指針であるフォワードガイダンス「必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる」にも変更はなかった。
植田日銀総裁は、2%目標実現の鍵を握る基調的物価が2025年度にかけて目標に向け徐々に高まるとの見通し実現の「確度は引き続き少しずつ高まっている」とした上で、「もう少しデータやさまざまな情報を見たい」との考えを示した。そして、来年1月会合の政策決定はそれまでに入手される情報次第だとしながらも、新しいデータはそんなに多くない、と述べており、1月会合での金融政策正常化の可能性は低下している。
8時50分に発表される11月貿易統計(通関ベース)は、季節調整前で9624億円の赤字、季節調整済で7689億円の赤字と予想されている。ドル円を下支えする本邦実需筋の円売り圧力を確認することになる。
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