【来週の注目材料】クリスマス・年末年始で落ち着いた動きか、日銀関連には注意
大きな動きを見せた2023年も年の瀬となり、来週には新年を迎えます。今年のドル円は1月に付けた127円台から11月に151円91銭まで上昇し、値幅は24円69銭。2022年ほどではありませんがかなりの大相場となりました。
今年の材料となったのが各国の金融政策動向。昨年ピークを迎えた世界的なインフレが鈍化する中で、多くの国で利上げが終了を迎え、利下げ開始が期待される状況となっています。
そうした中、緩和政策をかたくなに続け、一時は欧州を中心に複数国で見られたマイナス金利を維持するなど、独自路線を走っているのが日本銀行です。
しかし、日本の消費者物価指数(生鮮除く前年比)は2022年4月以降インフレターゲットである2%を上回る状況が続いています。1年半以上に渡る物価高に海外勢を中心に出口戦略に向けた期待が広がりつつあります。
12月7日に植田日銀総裁が参院財政金融委員会で「年末から来年にかけて一段とチャレンジングな状況になる」と発言した際には、海外勢を中心に早期のマイナス金利解除を期待する動きとなりました。12月18日、19日の日銀金融政策決定会合では、現状の金融政策が維持され、声明でも従来通りの緩和姿勢維持が示されました。会合後の植田総裁会見では、チャレンジング発言についての質問を受け、「仕事に取り組む姿勢についての質問を受け、一段と気を引き締めてというつもりで発言した」と回答。この会合及び会見を受けて期待が一時後退する場面が見られました。
しかし、21日に内閣府が示した政府経済見通しでは来年度の消費者物価指数見通しについて前年比+2.5%と、前回の+1.9%から大きく上方修正してきました。インフレターゲットの2%を上回る水準を見越す動きとなっており、日銀に対してもプレッシャーがかかるとの思惑から、市場では早期のマイナス金利解除期待が再燃しています。
こうした中、今週は一連の日銀関連の材料に注目が集まります。
25日には植田日銀総裁が日本経済団体連合会審議委員会で講演を行います。会合後の会見では緩和姿勢維持を示した植田総裁。会見からの大きな乖離が見られる可能性は低いですが、質疑応答などで今後の出口に向けた姿勢を市場が感じるようだと注意が必要です。
26日には日本銀行が「基調的なインフレ率を補足するための指標」を公表します。22日に発表された11月の消費者物価指数(生鮮除く前年比)は2.5%と10月の2.9%から鈍化しました。10月は9月の2.8%から反発し、物価鈍化が鈍ったことが懸念されていましたので、少し安心感が出ています。日本銀行は、物価を見るにあたって、インフレターゲットの対象は消費者物価指数(生鮮除くコア)ですが、特定のコア指標に依存するのではなく、様々なコア指標を総合的にみていくことによって、基調的な物価変動をより的確に把握することができるとの考え方を取っています。日本銀行調査統計局は上昇・下落品目比率、刈込平均値、最頻値、加重中央値を試算し、原則として、全国消費者物価指数の公表日の2営業日後の14時を目途に基調的なインフレ率を補足するための指標を公表しています。今回刈込平均値などでも鈍化がしっかりと示されると、マイナス金利解除期待がやや後退する可能性があります。
27日には今月の日銀金融政策決定会合の主な意見が発表されます。声明や総裁会見を見る限り緩和維持姿勢が強く感じられましたが、物価を警戒する動きなどが委員の意見として出てきているのかなどが注目されます。声明などに比べてタカ派な印象が見られると、円買いにつながります。
クリスマスから年末年始にかけて基本的には落ち着いた動きが見込まれますが、材料などに神経質に反応する展開が見られるようだと要注意です。
MINKABU PRESS 山岡和雅
みんかぶ(FX)