海外市場ではドル円は、米国のインフレ鈍化が鮮明になる中、米連邦準備理事会(FRB)が来年前半にも利下げに転じるとの観測がドル売りを促し、140.25円と7月28日以来5カ月ぶりの安値を付けた。ただ、ロンドン16時(日本時間1時)のフィキシングに絡んだ円売り・ドル買いのフローが観測されると141.59円付近まで急速に値を戻した。ユーロドルは1.1139ドルと7月27日以来約5カ月ぶりの高値を付けた。ただ、NY市場では年末年始を控えたポジション調整目的の売りなどが出て軟調に推移した。米長期金利の上昇に伴うユーロ売り・ドル買いも相場の重しとなり、一時1.1055ドルと日通し安値を更新した。
本日のドル円も昨日同様に方向感がなく、月末・年末の特殊玉にかき乱され乱高下を繰り返すことになりそうだ。昨日のドル円は米金利の上下があったとはいえ、1円50銭を超える大相場となった。本日は本邦からだけでなく、オセアニア・アジア諸外国から市場を動意づけるような主だった経済指標の発表や、金融関係の要人講演が予定されていないながらも、流動性が枯渇することが予想されることで激しく動くことになるだろう。
年末にかけては、日銀のゼロ金利政策の行方に対する憶測でドル円は上下したが、依然として今後の方向性は明確に示せないままだ。データ的には今週発表された、11月の全国消費者物価指数(CPI)から算出した「刈込平均値」「加重中央値」「最頻値」のインフレ基調3指標が、生鮮食料品を除くコアCPIが2%を超えてからは22年4月以来となる3指標の伸び率が同時にすべて縮小した。日銀政策決定会合の主な意見で「少なくとも来春の賃金交渉の動向を見てから判断しても遅くはない」との見解が示されたことも裏付けられる内容だった。
その一方で、インフレ基調3指標が公表された同26日に行われたNHKでのインタビューで、植田日銀総裁は「中小企業の賃金データが出てなくても、ほかの中小企業に関する指標が好調で、好循環を生み出すであろうということがあれば、ある程度前もっての判断ができる」と述べるなど、経団連が催促する「できるだけ早い正常化」へ舵を取る可能性を示している。同インタビューではチャレンジング発言について「政策的な意図を強く込めたものではなかったが、市場がどういうことを思っているのか、欲しがっているのかというのは非常によく分かった気がした」と述べた。しかし、この中小企業発言などを聞くと、市場はむしろより混迷を深めてしまい、年明けも市場との対話が成り立ってないことで乱高下となりそうだ。
リスクを持つのが難しい要因としては、来週本邦が休場の3日に12月米サプライマネジメント協会(ISM)製造業景気指数、11月米雇用動態調査(JOLTS)求人件数、12月12-13日に行われた米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨の公表など、重要イベントが予定されていることもある。個人投資家などはFX業者での取引でポジションを保持することはできるが、本邦の金融機関や一般投資家などは連休中は通常通りとはいかず、年明けにかけての大相場には警戒していることだろう。
また、東京の金融機関は午後からはユーロドル、ポンドドルなど東京が休場となる3日がスポット応当日の通貨の取引は極力避ける傾向が高まる。同様にクロス円も、ばらしてカバー(例、ポンド円をポンド円でカバーするのではなく、ポンドドルとドル円でカバー)することも難しくなってくることで、市場流動性が一気に悪化することには備えておきたい。
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