【来週の注目材料】米国の早期利下げ開始期待の後退も?=米消費者物価指数(CPI)
11日に12月の米消費者物価指数(CPI)が発表されます。
前回11月の米CPIは前年比+3.1%と10月の+3.2%から小幅な鈍化となりました。変動の激しいエネルギーと食品を除いたコア指数前年比は10月と同じ+4.0%となっています。
エネルギー価格が前年比-5.4%と大きく鈍化。中でもガソリン価格が-8.9%となり、全体を押し下げました。食品は前年比+2.9%まで鈍化。昨年8月をピークに15カ月連続で鈍化しています。
コア部分では財が前年比0%となりました。中古車販売が-2.0%と13カ月連続で前年比マイナス圏と低下傾向を続けたことが全体を押し下げました。新車販売も+1.3%と9カ月連続で伸びが鈍化し、鈍い伸びとなっています。衣料品が前年比+1.1%の伸びに留まるなど、全体に伸びが抑えられていました。
サービス部門は前年比+5.5%と上昇を続けています。CPI全体の34.8%を占める大きな項目である住居費が前年比+6.5%と高い伸びを継続していることが全体を押し上げました。住居費は家賃が更新時のみの変更で、変化が全体に対して遅行することもあり、米全体の物価のピークが2022年6月となっているのに対して、2023年3月がピークとなっています。そこからは9カ月連続で鈍化していますが、まだ鈍化途上という印象です。輸送サービスも前年比+10.1%の高い伸びとなりました。中でも自動車保険が+19.2%となっています。
米国のインフレターゲットの対象であるPCEデフレータは、CPIを押し上げた住居費が占める割合がCPIよりかなり小さく、一方前年比マイナス圏となった医療費の占める割合がCPIよりも大きいこともあって、11月は前年比+2.6%、コア前年比3.2%まで低下しています。今回12月の米CPIが鈍い伸びを示すと、2%のインフレターゲット達成に向けた流れが強まると期待されます。
今回の市場予想は前年比+3.3%と前回から若干上昇。コア前年比は+3.8%と前回から鈍化となっています。全体の伸びに関してはガソリン価格の反発が全体を押し上げると見られています。11月から12月にかけてのガソリン小売価格はEIA(米エネルギー省エネルギー情報局)全米全種平均で1ガロン当たり3.318ドルから3.134ドルに約5.5%の低下となっています。4カ月連続での低下です。ただ、比較対象元となる2022年の数字が11月の3.685ドルから12月は3.210ドルに約12.9%の大幅低下となっており、前年比でみると-9.96%から-2.37%と減少幅が大きく縮まりました。全米の数字であるEIAの数字と都市部のみのデータから算出するCPIの数字は違いますが、傾向はほぼ同じため、CPIでも前年比の減少幅が縮まると見込まれます。ガソリン価格の低下が前回CPI全体を押し下げただけに、、全体が強めに出る要因になると見られます。
コアに関しては住居費の伸び鈍化が続くと見られることから、少し下げてきますが、水準的にはまだかなり高いと見られており、コア前年比も+3.8%と高い水準を示してくると見られます。
インフレターゲットの対象であるPCEデフレータの方が低く出ていることもあり、CPIの結果を見て米国の早期利下げ開始期待がすぐに大きく後退するというものではありませんが、警戒感にはつながります。予想を超える伸びを示した場合や、コアの伸びが前回からの鈍化を見せなかった場合などは、ドル買いが一気に進む可能性がある点には注意したいところです。
1月3日に公表された12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨では、年内の利下げが適切と示しつつ、インフレ率が目標に向かって持続的に低下することが明らかになるまで、当面は金融引き締め状態に留まることが適切であると、市場の早期利下げ期待をけん制しています。
物価の鈍化がそれほど進んでこないようだと、市場が期待する3月の利下げ開始の見通しが後退する可能性が十分にあり、ドル高の大きな材料となります。ドル円はその他の状況次第で再び150円に向けた動きが強まる可能性まであると見られます。
MINKABU PRESS 山岡和雅
みんかぶ(FX)