予想を覆した2023年の米ドル/円 週足 (出所:TradingView)
2024年も再び予想に反して始まった米ドル/円・日足 (出所:TradingView)
新NISAの2つの枠
米ドル/円 日足 (出所:TradingView)
ユーロ/円 日足 (出所:TradingView)
年明け早々、令和6年能登半島地震が発生し、2024年は大変な始まりになりました。被災された方、被害にあわれた方に深くお見舞い申し上げます。
新年早々米ドル/円はいきなり5円急騰!
昨年末の大手金融機関の2024年の為替予想では、4年ぶりの円高が到来するというのがコンセンサスになっていました。
FRB(米連邦準備制度理事会)ピボットにBOJ(日本銀行)ピボット、つまり日米の金融政策の逆回転が予想される中、ロジックで組み立てれば、こうした円高予想が当たり前ともいえます。
ただ昨年末のコラムでもご紹介しましたが、こうしたコンセンサスは往々にして簡単に覆されます。
昨年(2023年)は2月の段階でこのコンセンサスは大きく修正を余儀なくされました。
円高の流れは1月16日の127.23円で終了。その後、米ドル/円は再び151.91円まで反発するという展開になりました。
その要因は日銀です。
多くのマーケット参加者が「日銀の植田和男新総裁が超金融緩和政策を解除する可能性が高い」と予想していました。
しかし日銀は全く動きませんでした。
一方、米国のインフレも全く沈静化せず、米国の利下げ期待も大きく後退という展開。
こうした経験を踏まえて、多くの市場参加者はマーケットのコンセンサスとは別に、2024年に米ドル高にリバースすることも想定して、新年相場をスタートさせています。
結果としては新年早々、米ドル/円は5円という値幅を伴って急騰というスタートとなっています。
では、なぜいきなり円安が急激に進行したのか?
想定以上に大きかった! 新NISAの円安インパクト!
今回は日銀やFRBの金融政策のスタンスに変化があったわけではありません。
その要因は新NISAです。
僕の周囲でも新NISAでの投資を始めた人が目立ちますが、彼らに人気なのは「オルカン」=eMAXIS Slim全世界株式(オールカントリー)やS&P500に連動する投資信託などの「外モノ」(海外投資型の金融商品)です。
S&P500連動投信はもちろん、オルカンも60%弱が米国株ですから、円売り・米ドル買いの材料となります。
新NISAによる円売りは年3~4兆円規模になるとの試算もあり、侮れない規模です。
新NISAを活用する人の中には限度額まで年初に一括購入しようという「年初一括勢」がいて、新年最初の営業日だった4日に投資したようで、その影響が強く出たとみられています。
年初一括勢の買いが一巡し、今後は積立勢がメインになるとすれば、今週(1/8~)は先週ほどのインパクトは出ないというのがマーケットの見方だったと思います。
実際、今週の米ドル/円は一時143.42円まで反落しています。
ところが、その後米ドル/円は一気に146.00円レベルまで再び駆け上がっています。
三菱UFJ系の投信「オルカン」に1日で1000億円超流入
今週の円安は再び「オルカン」の影響のようです。
三菱UFJ系の投信「オルカン」、1日で1000億円超流入
(出所:日経新聞)
9日のオルカン(=eMAXIS Slim全世界株式)の流入額は1013億円。昨年12月の月間流入額(1088億円)と同程度で、巨額でした。
ちなみに2番手はeMAXIS Slim S&P500で、こちらも659億円と1日にしては大きい。
今後も毎日1000億円が流入してくるわけではありませんが、新NISAの影響力は巨大です。
仮に新NISAがらみの投資が順調に増えてくれば、年3~4兆円の円売り注文が出るという見方も拡大。
特に海外勢は新NISAのことは知っていても、ナメているというか、具体的な規模やインパクトまではまだ広く知られていない状況です。
今後も新NISAがらみの円安フローが続く
新NISA勢は長期投資が前提で、そう簡単に決済しないし、当然為替ヘッジもなし。
今後、根雪のように円安方向に効いてくると考えています。
海外勢が認識していない本邦勢のオルカンを筆頭とする新NISA勢の円売り圧力。
年初一括勢の買いが一巡したといわれていますが、僕の周りでもこれからオルカンを始めたいという知り合いも多数います。
新NISA勢の円売りを背景に、まず米ドル/円、ユーロ/円を押し目買いからスタートでしょうか?
では、本年もよろしくお願いします。
ザイFX!