ドルインデックス 日足チャート
日本10年物国債利回りVS米10年物国債利回り 日足 (出所:TradingView)
ドルインデックス 週足 (出所:TradingView)
米ドル全体はトレンドレスの状況。
日本の長期金利上昇も米長期金利にはほど遠い
為替市場は、一進一退の状況が続いています。米ドル全体はまだら模様、いわゆるトレンドレスの状況ですから、トレーダーの多くは仕掛けにくいと思っているはずです。
日銀の政策維持は市場のコンセンサスのとおりでしたから、まったくサプライズなしと言えるところですが、一部の市場関係者は早ければ3月にもマイナス金利解消、といった予測を出しています。これをもって円買いの材料として解釈する向きもありますが、目先の市況では証明されていない模様です。
もっとも、円のマイナス金利解消があっても、ゼロ金利のままでは金利差で円が選好されにくいはずです。日本の10年物国債利回りが急騰してきたものの、執筆中の現時点の0.71%程度なら、米10年物国債利回りの4.1%となお大差があり、円が積極的に買われる理由にはなりません。
さらに、現時点で日米長期金利自体がそれぞれ日銀の3月、あるいは4月のマイナス金利解消、そして、米利下げの見通しを織り込んでいます。
換言すれば、仮に日銀が実際にマイナス金利を解消しても、日本の長期金利が現在の水準から急騰するとは限らないと思われます。
相場は常に現実より先行するものです。ゆえに、あたかも相場より先を予想できるかのような類の「予言」とは、距離を置いたほうがいいと思います。
日銀がマイナス金利を解消したら、日本国債は暴落、金利は急騰。そして、相場は大きく崩れる、とあおる言論に惑わされないほうが賢明です。
ドルインデックスは、上値トライする勢いが失われつつある。
米ドル安の進行、2022年高値からすでに始まっている
一方、相場の内部構造は将来のファンダメンタルズに左右されない上、将来のファンダメンタルズを「決定」してしまう、というのが筆者の持論です。ゆえに、相場における主要変動パターンや主要レジスタンス、サポートゾーンを観察すれば、ある程度、将来のことを推測できます。
米ドル全体の話をすると、短期スパンではまだら模様でも、中長期スパンでは、もはや鮮明になりつつあります。
なにしろ、ドルインデックスを観察すればわかるように、昨年(2023年)12月安値から大きく切り返してきたものの、2023年高値からの全下落幅の半分も回復しきれず、目先トレンドレスの状態なので、上値トライする勢いが失われつつあると思われます。
さらに、2023年のドルインデックスの高値も、2022年高値から2023年夏場までの全下落幅の半分程度に留まり、また、同水準を上回れなかったから、2023年年末まで再度下落してきました。
総合的にみると、やはり米ドル安の進行が2022年高値からすでに始まり、そして、早晩2023年安値を割り込んでいくと推測されます。
米金利がこれから低下していくなら、市場参加者の見通しや思惑が
変化していく
このような見方が正しければ、これから米金利も低下する傾向にあるはずです。
ちょっと待って! さっきの話と違うじゃないか! といった「お叱り」を受けそうですが、そうではないことを少し説明させていただきます。
先ほどは、確かに「今の米長期金利が米利下げを織り込んでいる」と書きました。これから米金利が低下していくという予測と矛盾を感じるかもしれませんが、現時点で市場関係者らの見通しや思惑を織り込んでいる米金利がこれから低下していくなら、市場参加者の見通しや思惑も変化していく、ということです。
つまり、ドルインデックスの内部構造に関する我々の見方が正しければ、これからの米利下げの進行は、市場参加者が現時点考えている米利下げの幅、あるいは回数を超えていく可能性があります。ファンメンタルズに関する見方は常に変動しているので、油断できません。
米ドルは、すでに頭打ちとなっている可能性大。
次期米大統領が誰であれ、その流れは修正できないはず
米ドル安の蓋然性は、米金利と連動する側面が大きいものの、決して米金利だけで決定されるものではありません。しかし、ファンダメンタルズ上の根拠をもって、なかなか事前にその蓋然性を指摘できないことも事実であり、相場の難しいところでもあります。
たとえば、今年(2024年)は米大統領選があります。トランプ前大統領が再登板する可能性が囁かれていますが、仮にトランプ氏が再選される場合、果たして米ドル高になるか、それとも米ドル安になるかは、実にわからないものです。
仮に、共和党政権の政策、あるいはトランプ氏の考えを詳細に分析し、事前に米ドル高だ、いや米ドル安だと断定する方がいれば、その方は詐欺師に近い存在だと思います。
しかし、相場の内部構造が米ドル安を示唆しているなら――筆者は断定できませんが――仮にトランプ氏が再度大統領になった場合、恐らく米ドル安になる政策、あるいは米ドル安に寄与すると解釈される政策を推進していくのではないかと思います。
トランプ氏の自国第一主義は、世に知られています。円安やユーロ安を許せないと言い出しても、まったくサプライズではないでしょう。
このような言い方は誤解を与えてしまう恐れがあるため、念のために言っておきますが、筆者は政治アナリストではないので、トランプ氏の政治信念をもって相場の行方を推測しているわけではありません。あくまで、相場自体の内部構造に徹すべきだと言っています。
米ドル全体は頭打ちをすでに果たしているか、これから果たす公算が高いので、市場関係者の思惑やファンダメンタルズに関する解釈も、次第に米ドル安の方向へ寄っていくはずです。次期米大統領が誰であれ、その流れを修正できないはずです。
市況はいかに。
ザイFX!