12日からの週は、ドル買いと円売りが優勢。ドル買いは13日発表の米消費者物価指数が予想を上回る伸びとなったことが背景。一方、15日発表の米小売売上高は弱含み、ドルが売り戻された。ただ、ドル指数は10日線に乗った上昇トレンドを継続しており、ドル高の流れは維持されている。ドル円はクロス円とともに上昇し、円安の面も指摘される。この週は日本株が好調で、日経平均はバブル後の高値を更新し、史上最高値にあと一歩まで買われた。リスク選好の円売りがみられるとともに、植田日銀総裁が緩和姿勢継続を繰り返したことも円売りにつながった。神田財務官などが円安けん制発言をしたが、円高方向への調整は限定的だった。ポンド相場は英指標発表ごとに上下動。英雇用統計の強さで買われたが、英消費者物価指数が予想を下回ると下落、英GDPの下振れも売りにつながった。欧州では独ZEW景況感指数は改善も、ユーロ圏全体のGDPは依然横ばいと力強さに欠けた。各国金融政策の波及効果が過渡期にあることが示されており、市場の思惑も神経質に変化した。
(12日)
東京市場は建国記念日の振り替え休日のため休場。
ロンドン市場は、ユーロ相場が軟調。朝方は米債利回り低下に反応してドル売りが先行。ユーロドルは1.0806近辺まで一時買われた。しかし、買いは続かず反落し、1.0770割れ水準へと下押しされている。ユーロは対円や対ポンドでも安く、ユーロ円は161.10付近を高値に160.50付近へと軟化。ユーロポンドは0.8540台から0.8530付近に一時下落。先週末にパネッタ伊中銀総裁が、利下げ時期が「間近に迫っている」と発言。さらにデコス・スペイン中銀総裁は「利下げ開始時期の決定、3月ECBインフレ・GDP見通しが極めて重要に」と述べるなど、早期利下げ開始を想起させる発言報道が相次いだ。ポンドドルは1.2655近辺まで買われたあとは、1.2610台へと反落。ドル円はアジア早朝の149.32近辺を高値に、ロンドン朝方に148.99近辺まで一時下落。その後は149円台前半で売買が交錯。米10年債利回りは4.15%台割れまで低下も、その後は4.18%台まで反発、その後はレンジ半ばに戻している。今日は目立った指標発表予定はなく、持続的な動きはみられず。明日の米消費者物価指数に市場の視線が集まっているようだ。
NY市場は、様子見ムード。明日の米消費者物価指数(CPI)待ちの雰囲気となっている。ドル円は朝方に一時148円台に値を落としたものの、動きが一巡すると149円台に戻す展開となった。ドル円は先週までの上昇に一服感が見られている。FRBの利下げ期待後退にもかかわらず、ここ数日のドルは戻り売りが優勢となっている。ユーロドルはロンドン朝方に1.08台まで上昇したものの、NY時間にかけて伸び悩む動きが見られ1.0755付近まで一時下落。明日の米CPIを控え、全体的に様子見気分が強まる中で、値動きは限定的に留まっている。ポンドドルは1.26台前半での狭い範囲で上下動。今週は重要な英経済指標が発表になり、ポンドはその内容を見極めたい雰囲気もあるようだ。明日は英雇用統計が発表され、明後日には英消費者物価指数(CPI)が公表される。本日はベイリー英中銀総裁の発言が伝わっていたが、景気の先行きに前向きな見方をしており、暗に早期利下げ期待をけん制していたようにも思われる。
(13日)
東京市場では、株高を受けて円売りが進んだ。ドル円の高値は先週金曜日に付けた149.58近辺に並んだ。株式市場の活況さと比べると、今晩の米消費者物価指数を意識している分、落ち着いた動きとなっているが、日経平均が一時3%を超える上昇となり、38000円の大台に乗せる動きを見せたことでリスク選好の円売りが出ていた。クロス円も総じてしっかり、ユーロ円は161円台に乗せる動きとなった。ポンド円は188.72近辺まで上昇。ユーロドルは朝から15ポイントレンジと1.07台後半で落ち着いた動き。ポンドドルも1.26台前半の21ポイントレンジ。NZドルは2年インフレ期待が大きく低下したことで、0.6120台から0.6096を付けるなど、売られた。
ロンドン市場は、ポンド買いが優勢。朝方に発表された10-12月の英ILO雇用統計で、失業率が予想外に低下、雇用増や賃金上昇も予想を上回る結果だったことに反応。対ドルでは1.26台後半、対円では189円台前半へと高値を伸ばしている。対ユーロでもポンド買いが優勢。対するユーロは対ドルでは1.07台後半での揉み合い、対円は161円台前半に買われるもポンド円ほどの勢いには欠けている。2月独Ifo景況感指数は期待指数が予想以上に改善したが、現状指数は一段と悪化し、2020年のコロナ禍の水準まで低下している。また、スイスフランが軟調。スイス消費者物価指数は前年比+1.3%に一段と低下、市場にスイス中銀の早期利下げ開始観測が広がっているもよう。ドル円は高値を149.69近辺に更新。昨年11月24日以来の高値水準をつけた。その後は上昇一服も149円台半ばで底堅く推移している。
NY市場では、ドル相場が急伸。米消費者物価指数(CPI)が予想を上回ったことでドル高の反応が強まり、ドル円はストップを巻き込んで一気に150円台に駆け上がった。150円を突破したことで、ショートカバーが活発化しているほか、テクニカル勢も新規の上値追いに動いた模様。米CPIは、総合指数が前年比3.1%、コア指数が3.9%と、両方とも予想を上回った。コア前月比や、FRBが注視しているとされる住居費を除くサービス業のインフレ、いわゆるスーパーコアも大幅上昇。短期金融市場では3月利下げの可能性がほぼ無くなったほか、5月の可能性も40%以下に大きく後退。完全織り込みは7月以降にずれ込んでいる。ユーロドルは売りが強まり、一時1.27ちょうど付近まで下落。ポンドドルも売りが強まり一時1.2575付近まで下落。
(14日)
東京市場では、円売りが一服。ドル円は昨日の米消費者物価指数(CPI)を受けて150.89近辺まで上昇した後を受けて、150.70前後の高値圏でスタート。150.80前後を付けた後、神田財務官が円安けん制発言を行ったことで円買いが入ったが、影響は限定的。150.50台まで下げた後、上値が少し重くなり、午後に150.42近辺まで下落したが、値幅自体は限定的。ユーロ円も朝の161.50台から161.14近辺までの調整売りが入った。日経平均が昨日の上昇から少し調整が入ったことなどが円買いにつながった。ユーロドルは1.0703-16と前日からの安値圏で13ポイントレンジに留まっている。
ロンドン市場は、ポンド売りが目立った。1月英消費者物価指数が予想を下回る伸びにとどまったことに反応。ポンドドルは1.26台乗せ水準から一気に1.25台半ばへと下落、その後も上値は重く1.2530台へと水準を下げている。ポンド円は189円台後半から188.70台まで下落。その後の買い戻しは限定的。対ユーロでもポンド売りが続いている。短期金融市場では昨日の強い英雇用統計で利下げ開始時期が後ずれしていたが、きょうの物価指標を受けて再び前倒しされてきている。英株式市場は堅調に推移。欧州株や米株先物も反発。ユーロドルはロンドン朝方に1.07台前半に買われたあと、ポンドドル下落につれて一時1.07台割れに。ドル円はロンドン朝方に150.35近辺まで軟化したが、その後は150.70付近まで下げ渋っている。政府・日銀の為替介入に対する警戒感はそれほど高まっていないようだ。ユーロ円は対ポンドでのユーロ買いもあって161円割れまで軟化したあとは、161円台前半に下げ渋っている。ユーロ圏GDP改定値は速報値から変化なし。ユーロ圏鉱工業生産は下振れしたが、ユーロ売り反応は特段みられなかった。
NY市場は、落ち着いた取引。ドル円は細かい上下動は見られたものの、基本的に150円での推移に変化はない。前日の米CPIを受けたドル高・円安水準を維持している。節目の150円を突破してきたことで、財務省の介入警戒感も気になるところ。しかし、市場では実弾介入にはまだ距離があるとの見方が多い。155円付近までは心配しなくても良さそうだとの見方も。市場の状況が秩序を欠いているようには見えず、財務省が介入を実施した2022年当時と比べれば、ボラティリティはまだ低いという。また、円独歩安の雰囲気でもない。ユーロドルは一時1.07を割り込む場面が見られたものの深掘りすることもなく、1.07台での推移が続いた。短期金融市場では6月までのECBの利下げを完全に織り込んでいる状況。英米などと比較すると早期の利下げ開始観測となっている。ポンドドルは売りが加速し、一時1.25台前半まで下落する場面も見られた。ドル高もさることながら、本日はポンド売りの側面も大きい。この日の英消費者物価指数(CPI)が予想を下回ったことでポンドは売りが強まった。
(15日)
東京市場は、円買い優勢。ドル円は、午前に米10年債利回りが4.22%台まで小幅に低下したことなどから、日米金利差を意識したドル売り・円買いが優勢となり、前日安値を下回る150.10台まで下落。その後はいったん下げ渋ったものの、1月米小売売上高発表を控えたポジション調整とみられる売りや、介入警戒感などが重石となり、午後に下値を広げ、この日の安値となる150.08付近まで下落した。ユーロ円はドル円同様に午後に一段安となり、一時161.02付近まで軟化。ユーロドルは前日終値付近でもみ合いとなり、1.07台前半で11ポイントレンジにとどまった。豪ドルは軟調。午前に発表された1月の豪雇用統計で、雇用者数は市場予想を大きく下回り、失業率は市場予想を上回り2年ぶりの高水準となった。これを受けて豪中銀による利下げ開始の早期化観測が広がり、豪ドル/ドルは0.6478付近まで、豪ドル円は97.32付近まで一時下落した。
ロンドン市場は、ドル売りが優勢。ドル円は上値重く推移。東京市場から見られたドル安・円高の流れが継続、米債利回り低下も加わって一時150円を割り込んだ。ロンドン市場に入って米債利回りの低下が進み、ドル売りとなった。米10年債利回りは4.21%台まで低下した。ユーロドルはドル安の流れを受けて1.0740近辺まで上昇。ユーロ円は一時160.90台まで下押し。ポンド相場は下落。英第4四半期GDPが予想を下回り、2期連続での前期比マイナスでテクニカルリセッション入りしたことに反応。ポンドドルは1.2570近辺から1.2540近辺へと下落した。ポンド円は一時188.20台と東京朝方の高値から約1円幅で下落した。
NY市場では、ドル売りが優勢。1月の米小売売上高が予想以上の減少となったことでドル売りが強まり、ドル円も瞬間的に149.55付近まで下落。今週の米消費者物価指数(CPI)の強さもあり、短期的にはドル高を見込む声が多いものの、ドル円は150円台に入ると戻り売りも観測されている。実需やクロス円の下落がドル円の上値を抑えている面も指摘される。ユーロドルは買い戻しが優勢となり、1.07台後半まで上昇。しかし、上値に軽さはなく、本日1.0795ドル付近に来ている100日線には到達せず。1.07ドル台半ばに伸び悩んだ。ラガルドECB総裁が欧州議会に出席し、ECBは新たな枠組みの下で保有債券を維持することになるだろうと語った。ポンドドルは買い戻しが優勢となり、1.25台後半に上昇。本日の英GDPは2期連続のマイナスとテクニカル・リセッションとなった。現時点での景気後退は、政治も金融政策も複雑にし、頭痛の種に。
(16日)
東京市場は、ドル円が底堅く推移。ドル円は149.90付近でで東京朝を迎えた。ボスティック・アトランタ連銀総裁の「利下げ急ぐ必要ない」との発言を受けてドル買いが入ったほか、朝からの日経平均の大幅高に上昇。株高が少し落ち着いたところで、植田日銀総裁が「マイナス金利解除しても緩和的な金融環境当面続く」と先週の内田副総裁と同様の発言を行い、再びの株高とドル高円安となった。ドル円は午後に入っても上昇基調を継続、150.37近辺に高値を伸ばした。ユーロ円も161.40台から161.80付近まで買われた。ユーロドルは1.07台後半で19ポイントレンジと、この時間帯は動意薄。
ロンドン市場は、ドル高水準での揉み合い。ドル円は東京午後に150.37近辺まで買われた後は、ロンドン朝方にかけて150.10台まで小反落。その後は150.20-30レベルでの揉み合いに。米10年債利回りは4.23%台から4.27%付近まで上昇し、その後は4.26%台に高止まり。英小売売上高が強含んだことでポンド買いの反応がみられたが、すぐに収束。ポンドドルは1.2575近辺から1.2606近辺での小幅振幅にとどまっている。ユーロドルは1.0757から1.0777までの20ポイントレンジ。東京市場で小緩んだあと、ロンドン市場では買い戻されている。ドル円の底堅い値動きとともに、ユーロ円は161.85近辺、ポンド円は189.34近辺まで買われた。ユーロ対ポンドではポンド買い先行後、ユーロ買いに転じている。シュナーベルECB理事は、「政策スタンスを時期尚早に調整しないように慎重である必要」と市場に広がる早期利下げ観測をけん制した。
NY市場でドル円は上に往って来いの展開となった。この日発表の米生産者物価指数(PPI)が予想を上回ったことでドルの買い戻しが強まり、ドル円は一時150.65付近まで上昇。しかし、今週の米消費者物価指数(CPI)以降に強まったドル高の勢いも一服しつつあり、上値ではドルの戻り売り圧力も強まっているようだ。NY市場は明日から3連休を控えていることもあり、ドルロングのポジション調整も出ていた模様。
みんかぶ(FX)